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<わたしの愛する山遊び> 山岳気象予報士・猪熊隆之が解説「雲海」~雲さえ読めれば手軽に見れる~
text by
林田順子Junko Hayashida
photograph byYuji Kamiya
posted2013/08/21 06:00
温暖前線と北東気流が生み出す好条件の仕組み。
ひとつめは冷たい空気と温かい空気がぶつかってできる温暖前線があるところです。冷たい空気は重いのでなかなか動こうとしないんです。そこに温かい空気がやってくると、冷たい空気の上に這い上がっていくんですね。そうすると上が温かく、下が冷たい大気が安定した状態になります。
もうひとつは関東地方に多いのですが、北東気流が流れ込んだときです。太平洋の湿った空気が北東の風に冷やされて、雲になり、そのまま関東平野に流れこむんです。このとき上空が高気圧に覆われていると下降気流が発生して、空気が下へと行こうとする。この気流が雲を抑えつけて雲海になります。
関東から見て北側、とくに三陸沖あたりに高気圧があるときに雲海ができやすいですね。こういう日は関東平野はどんよりと曇っていたり、小雨や霧雨が降ったりしています。だけど山頂は晴れていて、雲海が見える確率が高いんです。これらの雲海を見るためには、標高2000~2500mの地点がひとつの目安になります。
手軽に見たいのなら秋冬の盆地まわりの山がオススメ。
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雲海ができる条件を挙げましたが、手軽に雲海を見たいのでしたら、盆地まわりの山がいいでしょう。秋冬の盆地は朝晩冷えこみます。すると、地面の方が気温が低く、上空で気温が高くなるので、安定層ができやすいんです。安曇野や松本盆地は、しょっちゅう雲海ができるので、見られる確率は高いと思います。この時期に、高い山に登ろうとすると、冬山装備が必要になってくる。だからアルプスを望むような展望台に車やロープウェイでば~っと行っちゃえば、本当に簡単です。
もうひとつ知っておいてほしいのは滝雲。これは雲海よりもさらにレアです。滝が流れおちるように、雲の筋が下へと流れていく現象です。雲海は風が弱くないとできませんが、滝雲は山を吹き下ろす風が結構強くないとダメ。相反する2つの条件が絶妙のバランスで成り立っている状態なんです。