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ファーガソン引退は、なぜ今なのか?
錯綜する報道と後任をめぐる思惑。 

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山中忍

山中忍Shinobu Yamanaka

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posted2013/05/09 11:45

ファーガソン引退は、なぜ今なのか?錯綜する報道と後任をめぐる思惑。<Number Web> photograph by Getty Images

クラブからファーガソン監督引退が発表された5月8日に、オールド・トラッフォードのスタジアム外壁に張り出されたポスター。

「できる限り最高の環境で後任に引き継ぐため」

 栄光の監督キャリアに幕を引くファーガソンは、クラブの公式サイト上で、決意の理由を「潮時だ」と説明している。

「できる限り最高の環境で後任に引き継ぐため」のタイミングだと言う。27年前の就任時から、長期展望を持ち続けた指揮官は、クラブ公式サイト上で、プレミア王者となった今季マンUの戦力の高さや、年齢バランスの良さを指摘した。

 断トツ優勝を決めたとはいえ、ライバル勢の不甲斐なさにも救われた今季のマンUに関しては、巷で囁かれた歴代最強説に疑問はあるものの、その将来性も加味すれば頷けなくもない。

 得点源のロビン・ファンペルシは今がピークと思われるが、同じく今季レギュラーで、最終的に正GKの座に落ち着いたダビド・デヘア、CBとボランチの二役で貢献したフィル・ジョーンズ、中盤で運動量が光るトム・クレバリー、今季終盤に指揮官が来季への期待を繰り返し口にした2列目の香川真司、前線で成長著しいダニー・ウェルベックの中では、24歳の香川が最年長という若さだ。彼らの傍らにはライアン・ギグス、リオ・ファーディナンドといった、経験豊富なメンターが来季もいる。

最有力後継者はエバートン監督のデイビッド・モイーズ。

 勇退のタイミングは、ファーガソン自身が、現時点では最強ではないと認めている証拠とも受け取れる。

 伸びしろは大きいが、チームの完成を指揮するには老齢の身で時間が足りない。ならば、チームがリーグ王座奪回で自信を得たところで後進に道を譲るべきだと考えたのではないだろうか? 更なる補強が必要なことは事実であり、16年にわたり移籍市場での片腕だったデイビッド・ギルが、一足先に今季限りでのCEO退任を決めていたことも、体制交代の時期と判断する一因だったと思われる。

 早ければ今週中にも発表されるという後任としては、デイビッド・モイーズが最有力候補と見られている。

 今季末でエバートンとの契約が満了するモイーズは、同じスコットランド人にして、ファーガソンが10年以上前から監督としての能力と将来性の高さを買っている人物だ。育成を重んじる姿勢も共通している。就任となれば、エバートン時代から関係がぎくしゃくしていたウェイン・ルーニーを失いそうだが、ファーガソンから今季、エース失格の烙印を押された感があり、PSGやバイエルンへの興味を示しているルーニーは、誰が新監督でも新天地を求めると見られる。エバートンとは桁違いのプレッシャーとチーム内のエゴの大きさが、モイーズ最大のハードルだ。

【次ページ】 対抗馬としてモウリーニョ、そしてクロップも。

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