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井上尚弥はなぜ“危険な殴り合い”に身を投じた? 現地ラスベガスのリアルな声「イノウエがボクシングの週末を救った」激闘カルデナス戦“本当の意義”

posted2025/05/06 17:02

 
井上尚弥はなぜ“危険な殴り合い”に身を投じた? 現地ラスベガスのリアルな声「イノウエがボクシングの週末を救った」激闘カルデナス戦“本当の意義”<Number Web> photograph by Hiroaki Yamaguchi

猛烈な連打で挑戦者ラモン・カルデナスを追い詰める井上尚弥。ラスベガスでのビッグマッチは手に汗握る激闘となった

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渋谷淳

渋谷淳Jun Shibuya

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Hiroaki Yamaguchi

“モンスター”井上尚弥(大橋)が5月4日(日本時間5日)にラスベガスで行ったスーパーバンタム級4団体王座防衛戦はスリル満点の展開の末、井上が8回45秒TKO勝ちで4本のベルトを守った。WBA1位の挑戦者ラモン・カルデナス(米)にダウンを奪われながら、最後は期待通りのKO勝ち。井上はなぜ打ち合いに身を投じたのか。そしてラスベガスに何を残したのだろうか。(全2回の2回目/前編へ)

まさかのダウンも…井上尚弥はどこまでも強気だった

 井上が2回にダウンを喫した。ちょうど1年前、東京ドームでルイス・ネリに初回にダウンを奪われて以来のサプライズだ。会場が騒然となる中、残り時間は少なく、立ち上がった井上は新たなピンチを迎えることなく、ラウンド終了のゴングを聞いた。

 3回、井上は攻めに出た。まずはディフェンスを重視し、リスクを回避してダメージを完全に抜くという選択肢もあったはずだ。しかし、井上はジャブを突きながらワンツー、左フックを盛んに繰り出してカルデナスに迫った。世界が注視するラスベガスで下手な試合は見せられない。そんな使命感からなのか、井上はどこまでも強気に見えた。

 モンスターと拳を交える幸運に恵まれた挑戦者も黙っていない。井上の打ち終わりに左フック、右ストレートをフルスイングする。大志を抱く無名のカルデナスはどこまでも勇敢だった。

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 会場は「メヒコ」コールと「イノウエ」コールが重なってヒートアップするばかり。試合は「手に汗握る」という表現がふさわしいエキサイティングな展開に突入していった。

「映像と全然違った」挑戦者カルデナスの脅威

 井上は4回以降も危険な打ち合いに身を投じていく。カルデナスの強打を紙一重でかわすのだが、挑戦者の空を切るパンチは音が聞こえそうなくらい鋭い。2回のダウンもあって見ているほうはヒヤヒヤだ。

 カルデナスは試合後、「井上は手が下がる瞬間がある。そこを狙った」と解説した。もともとパワーを前面に押し出して一発一発をフルスイングするタイプではないが、モンスターと対峙したこの日は違った。井上に「映像と全然違った。すごく対策をしてきた」と言わしめるパフォーマンスを披露した。

【次ページ】 現地の声「イノウエがボクシングの週末を救った」

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