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将棋PRESSBACK NUMBER
藤井聡太と永瀬拓矢の名人戦「関係者はソワソワ」GWの羽田空港に“2人だけの異空間”…取材記者が見た舞台裏「飛行機を止めてくれと言われるかと(笑)」
posted2025/05/07 11:28

ゴールデンウィークの羽田空港で行われた名人戦第2局。藤井聡太名人と永瀬拓矢九段が白熱の攻防を繰り広げた
text by

いしかわごうGo Ishikawa
photograph by
Number Web
「勝敗を超えた何か」を追求しているかのように…
終局後、感想戦の前に主催社からの質問に応じる藤井聡太名人が、ややうつむき加減のまま、盤面で繰り広げられた2日間の記憶を反芻していく。
ときおり額に手を当てながら、言葉を丁寧に紡ぐ。
難解を極める将棋だったことは、一局の総括を求められた際の感想が物語っていた。
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「経験のない将棋で序盤は少し主張のない形になってしまい、中盤も難しいですけど、自信のない局面が多かったです。……そうですね。最後の最後で好転したという将棋だったと思います」
一方の永瀬拓矢九段。
将棋の対局というのは、決着後は勝者よりも敗者の方が明るく応じる傾向がある。局後の質問に応える永瀬は、清々しいほどよどみなく話していた。
ただし、困惑の表情を浮かべるシーンもあった。
千日手模様で進んでいたと思われていた1日目の封じ手までの局面を尋ねられると、「封じ手の局面では千日手模様ではないという認識でした。千日手模様だと記憶違いなのかな」と、その前提をやんわりと否定。やや噛み合わないやり取りもあったが、その後は頷きながら見解を続けた。
そして、2日目の終盤の勝負どころで招いた劣勢を反省し、一局の総括としている
「後手が待機策の将棋なんですけど、先手にどの形で打開されるかという将棋で、中盤は少し楽しみがあるかと思いましたが、2日目の夕方の休憩後に課題はあったと思います」
その後は感想戦に入った。
再び2人だけの世界に没頭し、棋界の最高峰の舞台でお互いの意見を楽しそうにぶつけ合う。
両者は研究パートナーとして勝手知ったる間柄でもある。決着がついた後の対局場は、勝敗を超えた何かを追求しているかのような空間になっていた。