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藤井聡太と永瀬拓矢の名人戦「関係者はソワソワ」GWの羽田空港に“2人だけの異空間”…取材記者が見た舞台裏「飛行機を止めてくれと言われるかと(笑)」

posted2025/05/07 11:28

 
藤井聡太と永瀬拓矢の名人戦「関係者はソワソワ」GWの羽田空港に“2人だけの異空間”…取材記者が見た舞台裏「飛行機を止めてくれと言われるかと(笑)」<Number Web> photograph by Number Web

ゴールデンウィークの羽田空港で行われた名人戦第2局。藤井聡太名人と永瀬拓矢九段が白熱の攻防を繰り広げた

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いしかわごう

いしかわごうGo Ishikawa

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4月29日から30日にかけて、東京都大田区の羽田空港第1ターミナルで名人戦第2局が行われた。2日間にわたる激闘は、藤井聡太名人が挑戦者・永瀬拓矢九段に勝利。開幕から連勝となり、名人位3連覇に前進した。現地取材した記者が、白熱した“空港対決”の詳細をレポートする(全2回の1回目/後編へ)

「勝敗を超えた何か」を追求しているかのように…

 終局後、感想戦の前に主催社からの質問に応じる藤井聡太名人が、ややうつむき加減のまま、盤面で繰り広げられた2日間の記憶を反芻していく。

 ときおり額に手を当てながら、言葉を丁寧に紡ぐ。

 難解を極める将棋だったことは、一局の総括を求められた際の感想が物語っていた。

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「経験のない将棋で序盤は少し主張のない形になってしまい、中盤も難しいですけど、自信のない局面が多かったです。……そうですね。最後の最後で好転したという将棋だったと思います」

 一方の永瀬拓矢九段。

 将棋の対局というのは、決着後は勝者よりも敗者の方が明るく応じる傾向がある。局後の質問に応える永瀬は、清々しいほどよどみなく話していた。

 ただし、困惑の表情を浮かべるシーンもあった。

 千日手模様で進んでいたと思われていた1日目の封じ手までの局面を尋ねられると、「封じ手の局面では千日手模様ではないという認識でした。千日手模様だと記憶違いなのかな」と、その前提をやんわりと否定。やや噛み合わないやり取りもあったが、その後は頷きながら見解を続けた。

 そして、2日目の終盤の勝負どころで招いた劣勢を反省し、一局の総括としている

「後手が待機策の将棋なんですけど、先手にどの形で打開されるかという将棋で、中盤は少し楽しみがあるかと思いましたが、2日目の夕方の休憩後に課題はあったと思います」

 その後は感想戦に入った。

 再び2人だけの世界に没頭し、棋界の最高峰の舞台でお互いの意見を楽しそうにぶつけ合う。

 両者は研究パートナーとして勝手知ったる間柄でもある。決着がついた後の対局場は、勝敗を超えた何かを追求しているかのような空間になっていた。

【次ページ】 「不思議な現場」だったゴールデンウィークの羽田空港

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