革命前夜~1994年の近鉄バファローズBACK NUMBER
「ノーノーあるあるなんです」1994年開幕戦・清原和博の打球に守備陣が思わぬ反応!? それでも野茂英雄なら「ここで三振で終わり」のはずが…
posted2025/05/02 11:06

ノーヒットノーラン目前で清原和博の「捕れた当たり」がヒットになり、一転ピンチに。それでも野茂英雄への信頼は揺るがないはずだったが…
text by

喜瀬雅則Masanori Kise
photograph by
Koji Asakura
1995年5月2日、野茂英雄がメジャー初登板を果たしてからちょうど30年。野茂の渡米はどうして可能になったのか? すべてがはじまった前年、1994年の近鉄バファローズの関係者たちを当時の番記者が再訪し、「革命前夜」を描き出す。開幕戦で快挙を目前にした野茂。打席には清原和博——。〈連載「革命前夜〜1994年の近鉄バファローズ」第4回/つづきを読む〉
清原の、野茂との日本での対戦5年間で通算打率.356、42安打、10本塁打はいずれも対野茂ではトップ。一方、34三振は、秋山幸二52、デストラーデ35に続く歴代3位でもある。ちなみに、4位の31三振で佐々木誠がこれに続いている。
野茂対清原。平成の名勝負と言われ、真っ向からの力勝負が代名詞。それが、どこかしら男のロマンのように報じられ、誰もがその真っ向勝負を期待していた。
“平成の名勝負”という「邪魔」
捕手の光山英和にとっては、佐々木も指摘したその“看板”が、思考の邪魔でもあった。
ADVERTISEMENT
「当時、野茂・清原対決っていったら、もう、真っすぐが美化されまくっていて、なんかそれが、男の勝負みたいになってたじゃないですか」
直前の3打席は、三振、四球、右飛と、野茂が抑え込んでいた。大記録達成へ事実上、ここが最後の、そして最大の関門だろう。
野茂の調子は落ちていない。球のキレも、十分に感じられる。
大記録まで、あと3人。
「やるわ、って感じでしたね。エグい、って感じではなかったですけど」
光山は、腹をくくった。
野茂に首を振らせないサインを
カウント2ボール1ストライク。ボールが先行しての4球目だった。
「フォークボールのサインを出したかったんですけど、絶対、野茂は首を振る。逆に首を振らせると真っすぐってバレてしまうと思って、なので自分はフォークを投げさせたかったんですけど、首を振らさんように、最初から真っすぐにしたんです」
野茂は、こくりとうなずいた。
134球目、外角高めへの真っすぐ。清原は、右方向へ打ち返した。