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“平成生まれの名勝負”の予感――。
中田翔vs.菊池雄星の濃密な対決。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2013/05/07 12:45
5月5日、西武vs.日本ハム戦の1回表。この試合最初の対決では、中田をショートへの併殺打に打ち取った菊池。
「平成の名勝負」ならぬ「平成生まれの名勝負」である。
平成元年4月生まれでプロ入団6年目、日本ハム・中田翔。
平成3年6月生まれでプロ入団4年目、西武・菊池雄星。
この2人が、痺れるような対決を続けている。
5月5日の対戦で今季すでに3度目という両者の対決は、2人の勝負そのものがチームの勝敗に直結しているというほどの熱さとなった。
2人にはいくつかの共通点がある。ともに高校野球のスターとして甲子園を沸かせ、ドラフト前にはメジャー数球団が食指を伸ばしたという逸材であったということ。重複指名を経て、ドラフト1位での入団だった。
入団1年目は春季キャンプから一軍入りするなど期待されながら、シーズンが開幕したころには二軍降格。1年目は日の目を見ず、一軍デビューは2年目からという道のりを2人は辿ってきた。2学年上の中田翔の方が、今年のWBC日本代表に入るなど先んじているが、菊池雄星にしても年々チーム内での立場を確立してきている。
5月5日の対決に至るまでに、今季の2人はすでにチーム内で存在感を示していた。
「1試合3本塁打」と「防御率1.08で今季すでに3勝」の対決。
中田は開幕当初こそつまづいたが、すぐに調子を上げていくと、4月4日の千葉ロッテ戦で同い年の唐川侑己から今季初本塁打。同7日のソフトバンク戦では、8回に起死回生の逆転3点本塁打を放りこむ「勝負強さ」を見せつけた。
5月3日の楽天戦では高校時代にも果たせなかった1試合3本塁打の離れ業。そして、翌日4日の西武戦では4打数3安打の固め打ち。1試合で3本塁打も打てば、力んで振りが大きくなることも懸念されたが「別にホームランを狙って打席に入っているわけじゃないですからね」という本人の言葉通り、甘い球を見逃さずにヒットを量産した。5月6日時点で打率.339、8本塁打、25打点と、すべての部門でパ・リーグ上位に顔を出し、三冠王すら視界に入っている。
一方の菊池は開幕2戦目に先発して初勝利を挙げ、5日の登板前の時点で5試合に投げて3勝1敗、防御率1.08。4月13日の楽天戦で今季チーム初の完封をもたらし、開幕投手を務めた岸孝之の調子が上がらない中、西武投手陣をけん引するひとりとなっている。
今季初白星が日ハム戦なら、初黒星も日ハム戦だった。勝った試合では中田を2三振に斬り、負けた試合では中田に本塁打を浴びるという、両者の対決を浮き彫りにするような対戦成績を残している。