フットボール“新語録”BACK NUMBER
未勝利でも、進退問題が出ても……。
風間八宏監督が断固理想を追う理由。
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph byYusuke Nishizono
posted2013/04/19 10:31
4月13日、横浜F・マリノス戦の記者会見で出た「進退問題も出てくるのではないか?」という問いに対して、「僕の仕事は選手とともに前を向いてやっていくこと。進退は僕が決めることではない」と淡々と答えた川崎フロンターレの風間八宏監督。
「自分がやろうとしている守備は、ユベントスの守備に似ているんだ」
風間八宏(川崎フロンターレ監督)
またしても川崎フロンターレの風間八宏監督が物議をかもしている。今季のJリーグにおいて、開幕から6試合で3分3敗とまだ勝利がないのだ。
1対2で敗れた第6節の横浜F・マリノス戦後には、ついに記者会見で「進退問題も出てくるのではないか?」という批判的な質問が出た。当然だろう。プロである以上、結果が出なければ、指揮官の責任だ。最も手っ取り早いチーム改革は、監督を替えることである。
常識的に今季を見通せば、現在15位の川崎は、18位の大分トリニータ(2分4敗)、17位のジュビロ磐田(2分4敗)、16位の湘南ベルマーレ(3分3敗)とともに、残留争いのうねりに巻き込まれていくことになるだろう。
ハイプレスもかけず、攻撃でも相手の思うつぼにはまっている!?
Jリーグの標準的な戦術からすると、風間監督のサッカーは理解しづらいものばかりだ。
まず守備面では、ハイプレスをしかけない。
近代サッカーでは前線の選手たちがボールに対して継続的に圧力をかけるプレッシングが効率的とされ、「選手がピッチでどれだけ走っているか?」がチームのパフォーマンスのひとつの指標になる。
それに対して、風間監督の下でのフロンターレの選手たちは、守備のときそれほど必死に走っていないように見える。スタジアムで観戦しているファンからしたら、実にもどかしいだろう。
攻撃面では、相手の罠に対して無策……に見える。
川崎が正確に、意図を持ってパスをつないでいくことは、相手チームもスカウティングすればすぐにわかる。そのためどのチームもDFラインからボランチへのパス、ボランチから前線への縦パスを狙ってくる。
にもかかわらず風間監督は、相手の罠から逃げて一か八かのロングボールを相手DFの裏を目がけてどんどん放り込ませることはせず、自分たちの力で罠を破ろうとする。それが継続した得点への近道と考えているからだ。
予想通り、中村憲剛へのパスを遮断されて敗北したフロンターレ。
マリノス戦の2失点は、ともにCKによるものだった。
だが、そもそもCKを奪われたのは、中盤におけるミスからボールを失ったことが原因だった。1失点目のCKは、大島僚太の縦パスがカットされてカウンターを食らって生まれたものだ。
試合後、樋口靖洋監督が「中村憲剛への後ろからのボールを遮断したいと考えていた」と語ったように、相手からしたら狙い通り。フロンターレが罠から逃げないことが、対戦相手は不思議で仕方がないに違いない。