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成熟した広島の“連動性”と“意外性”。
スーパー杯で見せたJ王者の逞しさ。
text by
茂野聡士Satoshi Shigeno
photograph byDaiju Kitamura/AFLO SPORT
posted2013/02/25 12:10
猛然とオーバーラップをかける広島の水本(写真中)。柏の“広島対策”に対し、広島はチーム全体の臨機応変なプレーで“再対応”し、J王者の貫録を見せた。
柏は積極的な守備で広島のシステムを封じにかかる。
対戦相手の柏は、長年4バックの守備を布いてきたが、今年はキャンプから3バックを採り入れている。
序盤は広島の攻撃の核となる1トップ2シャドーに対して寿人には近藤直也、高萩洋次郎には増嶋竜也、森崎浩には鈴木大輔とそれぞれ厳重なマーキングを施した。広島の後方から供給される縦パスが1トップ2シャドーへと入った瞬間、柏の各マーカーは素早くチェックを仕掛けた。ゴールの位置が遠いハーフライン付近でも潰しに来る積極的な守備に、広島はなかなかリズムを生み出せなかった。昨年、Jを席巻した可変システム封じが奏功し、柏ペースになるかとも思われた――。
そんな状況の中で、得点シーンでは水本がオーバーラップを仕掛けた。鈴木が危険なゾーンに入り込んできた水本へとマークを切り替えた際のギャップを、青山と森崎浩が生かしたプレーだった。
「今日は、選手が臨機応変に対応してくれた」(森保一監督)
昨シーズンまで、広島の可変システムの中で最終ラインの攻撃参加を主に担っていたのは、今季浦和へと移籍した森脇良太だった。右サイドの森脇と比較すると上がる場面が少なかった水本だったが、この日は積極的に攻撃参加しようと考えていたという。水本のアグレッシブさを、3バックを束ねる千葉和彦は冗談めかしながらもこう語った。
「気合が入っているな、と思ってましたよ(笑)。でも、(水本の攻撃参加が)いいアクセントになっていたのは間違いないです」
千葉が「アクセント」と表現したもの。それは意外性あるプレー選択とも言い換えられる。広島のコンセプトを支える可変システムについては以前も書いたが、シーズンを経るにつれて対戦相手は対策を練ってきた。それはスーパーカップでの柏の守備組織も同じことが言える。森保一監督も攻めあぐねた序盤について「つながりが出来なかったということ」と評した。
その上で、こう続けた。
「上手くいかない時間があっても、“自分たちのペースに持って行けるだろう”とプレーし続けてくれたと思います。そして今日は、選手が臨機応変に対応してくれるプレーを見て、たくましくなってきたなと感じています」
臨機応変なプレーは水本のオーバーラップに象徴されているが、意外性ある動きを見せたのは水本だけではなかった。
例えば、右サイドハーフの石川大徳である。