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ACL初戦は価値あるレッスンに。
“強豪”ベガルタ仙台への第一歩。
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph byGetty Images
posted2013/02/27 11:40
厳しいマークにあった梁勇基(右)だが、53分にはPKを落ち着いて決め、貴重な1点を奪った。
全身を凍りつかせるような寒さは、ベガルタ仙台のアドバンテージとはならなかった。
2月26日のACL初戦でブリーラム・ユナイテッド(タイ)を迎えたホームゲームは、1対1の引き分けに終わった。
悪いゲームでは、ない。
この試合では前半に4-3-3、後半に4-4-2と、2つのシステムを使い分けている。試合中のシステム変更は昨シーズンも見られたが、攻撃を強く意識した4-3-3は今季から導入した新たなオプションだ。ともにスピード豊かな太田吉彰と武藤雄樹を両翼に置いた3トップは、「サイドの速い選手にアジアのチームは弱いとの情報もある」(手倉森誠監督)というスカウティングにも基づいていた。
中盤のアンカー役を担った角田誠は、「4-3-3は選手同士の距離が遠かった」と語り、「もうちょっと練習したい」と付け加えた。「自分たちがサイドに張って相手を下げようとしたんですけど、前半はあまり有効に機能しなかったですね」と武藤も話す。
とはいえ、4-3-3は最初の一歩を踏み出したばかりである。得点は53分、相手のハンドによって得たPKの1点のみに終わったが、課題が先行するのは当然と言っていい。
新布陣は機能したが、ブリーラムは予想以上に洗練されていた!?
ブリーラム戦はセンターバックの鎌田次郎と上本大海、右サイドバックの菅井直樹らの主力を欠き、昨季ベストイレブンのウイルソンもベンチスタートだった。そのなかでも、4-4-2はこれまで同様の機能性を発揮している。「取れるチャンスで取りきらないと痛い目に遭う」とブリーラム戦をまとめた手倉森監督も、「チャンスを作れたのは前向きに評価したい」と続けた。
76分に喫した失点はCKからで、「流れのなかで簡単に崩された場面はなかった」と、新加入のセンターバック石川直樹は振り返っている。「守備の連携はある程度できた。お互いのカバーリングもできつつある」と、今後へつながる手ごたえもつかんだ。
対戦相手のブリーラムにも触れるべきだろう。
ベガルタが属するグループEではもっとも力が落ちると見られているが、ショートパス主体の洗練されたサッカーは格下の認識を覆すものだった。時間帯に応じたゲーム運びも巧みで、局面での激しさにも秀でる。ACL初参戦のベガルタには、価値あるレッスンになっただろう。
4-4-2と4-2-3-1に4-3-3を加えた今シーズンは、「柔軟性がテーマだ」と手倉森監督は話す。キャンプ終盤の練習試合では、「どんなやり方でもコレクティブなサッカーを表現すること」を追求してきた。
さらに、ベガルタが新たなチーム環境にあることを指して、こうも語っていた。
「昨年、一昨年と2シーズン上位にいたことで、周りの見方が変わってくる。我々を上位チームと見た相手は、仙台が昇格したばかりの頃と同じ姿勢、つまり守備を重視して向かってくるようになる。そうすると、いよいよ、攻撃力がなければいけなくなる」