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今季Jリーグのキーワードは“縦”!!
ポジションレス時代に呼応する新世代。
text by
細江克弥Katsuya Hosoe
photograph byAFLO
posted2013/01/05 08:01
広い視野に裏付けされた展開力とともに、無回転のミドルも併せ持つ広島のボランチ、青山敏弘。2012年Jリーグベストイレブンに初選出された。
アジリティーは「決定力不足」の打開策に過ぎない。
過去の取材ノートを見直すと、「縦に仕掛けられるか」を基準とする自分なりの評価が綴られている。あくまで私見だが、そこから「2013年の飛躍を期待する選手」をピックアップして紹介したい。キーワードはもちろん「縦」である。
2006年のドイツW杯が終わった頃から、日本の弱点はセンターバックにあると思っている。
体格で世界に劣る日本人選手は、近年、その不利を補うために“アジリティー(俊敏性)”に注目してきた。イビチャ・オシムが「日本人らしさ」と定義したその能力が確かに世界に通用することは、近年の日本代表の進化、欧州トップリーグで活躍する海外組の台頭を見れば明らかである。最前線から最終ラインまでの距離が圧縮された現代サッカーにおいてはスペースと時間に限りがあるが、体が小さく、俊敏性に優れた日本人選手の特長はそこを突破するための有効な手段となる。もっともそのストロングポイントは、長く「決定力不足」が叫ばれた攻撃面においての打開策でしかない。
身体能力、攻撃への関与……バランス型の吉田麻也。
センターバックにとって世界との間にある体格の差、すなわち高さと強さの差はいかんとも埋め難い。加えて現代サッカーでは、サイドバックと同様に、相手のプレッシャーを受けにくいセンターバックにも攻撃に関与する展開力が求められる。だから、今やセンターバックは高さと強さだけでなく、足下の上手さもスピードも賢さも備えた“万能型”であることが理想型となりつつある。その“最先端”としてイメージしやすいのが、バルセロナのジェラール・ピケやチェルシーのダビド・ルイスだ。
中澤佑二は日本人離れした高さと強さを誇るが、攻撃を組み立てられるほどの展開力はない。宮本恒靖は攻撃センスに溢れるが、高さと強さが足りない。田中マルクス闘莉王は群を抜いた対人能力と攻撃力を有するが、組織で守る繊細なポジショニングセンスとスピードにもの足りなさを感じる。だからどの能力もバランスよく備え、しかも若くて伸びしろがある吉田麻也の台頭には、日本サッカー界のセンターバック事情における新時代の幕開けを感じた。
もっとも、日本代表における吉田は、現在の今野泰幸に与えられている役割を担うべき存在だと思う。つまり、高さと強さよりも、ポジショニングをベースとする守備センスと展開力を武器とする攻撃センスで真価を発揮するタイプである。