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「審判のレベルが上がっていない!」
柏のレアンドロが訴えたJの課題。
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph byAFLO
posted2013/01/11 10:30
昨年のJ1最終節で退場処分を受け、計3試合の出場停止となったレアンドロ・ドミンゲス。天皇杯は準決勝まで出場できなかったが、決勝では両チーム最多のシュート5本を放つなど攻撃を牽引し、優勝に大きく貢献した。
「2012年のJリーグはゲームのレベルが上がった一方で、審判のレベルが上がっていなかった」
レアンドロ・ドミンゲス(柏レイソル)
2012年12月3日のJリーグアウォーズにおいて、こんな場面があった。
表彰式終了後のミックスゾーンで、柏レイソルのレアンドロ・ドミンゲスに「2012年のJリーグのレベルはどう感じましたか?」と質問したときのことだ。この前年度MVPのブラジル人MFは、表情を引き締めて力強く言った。
「Jリーグのレベルは毎年上がっている。上位と下位が試合をしても、どちらが勝つかわからず、簡単なゲームはひとつもない。ただし、ゲームのレベルが上がっている一方で、審判のレベルが上がっていない。選手も頑張るから、審判にも頑張って向上してほしいと思う」
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お祭りムードのミックスゾーンに一瞬にして緊張感が走った。いったいレアンドロは、Jリーグの審判のどこに不満を抱いているのか?
「具体的にはどんなプレーについてですか?」と訊こうとすると、すぐ横にいた広報が「そういう質問はやめてください」と止めに入った。それでもレアンドロは制止を無視して、言葉を続けた。
日本人審判に対する「すぐに笛を吹く」という先入観。
「マークにおける接触プレーの判定の基準だ。きっちり取るところを取る、流すところは流す。その状況判断をしっかりしてほしい。もちろんそれと同時に、選手は審判を騙すようなプレーをしてはいけない。繰り返しになるが、選手も審判もいっしょに成長していく必要がある」
実はこの2日前に行なわれた第34節の鹿島戦で、レアンドロはイエローカードを2枚受けて退場になっていた(主審は扇谷健司)。2枚目の警告の場面で、レアンドロは興梠慎三に対して斜め後ろからチェックしたのだが、足はボールに当たっており、(百歩譲ってファウルだったとしても)イエローカードという判定はあまりにも厳しいものだった。
どうしても日本人審判には、“選手が倒れたら、すぐに笛を吹く”という悪いイメージがある(この問題については過去のコラム、『Jリーグの選手は過保護なのか? 西村W杯審判員が伝えた意外な事実。』を参照。西村主審は「日本の選手たちは、フィジカルコンタクトがあるとすぐに倒れる。でも、接触があって倒れたら、ルール上、ファウルはファウルなので、レフェリーとしては笛を吹かなければいけないんですよ」と説明)。おそらくレアンドロもそういう苛立ちを覚えており、鹿島戦のジャッジでさらに火がついたのだろう。