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WBCメンバーに最も多く選ばれた、
“縁の下の力持ち”世代に刮目せよ!
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byHideki Sugiyama
posted2012/12/19 11:35
プロ6年目の今季、自身最多の12勝と自身最高の防御率2.03を記録した大隣(ソフトバンク)。他にも、長野(巨人)、岡田(ロッテ)、本多(ソフトバンク)がゴールデングラブ賞を受賞するなど、“縁の下の力持ち”世代の活躍が目立った。
意外だった。
12月4日に発表されたWBCメンバーの年齢を調べていて思ったことだ。
予想だにしない世代の選手たちが今回最多のメンバーを輩出している。名付けて“縁の下の力持ち”世代。'84~'85年生まれの選手たちである。
今回のメンバーでいうと、吉見一起、浅尾拓也(ともに中日)、大隣憲司、本多雄一(ともにソフトバンク)、牧田和久(西武)、長野久義(巨人)。
これまで野球善哉では「○○世代」というテーマのコラムを何度か書いてきた。松坂世代以来の大豊作ともいわれた「田中・斎藤世代」('88~'89年生まれ)、ダルビッシュ世代と田中・斎藤世代に挟まれたT-岡田(オリックス)らを「谷間世代」('87~'88年生まれ)。中田翔(日本ハム)、唐川侑己(ロッテ)、由規(ヤクルト)ら同期を「平成元年生まれ」('89~'90年生まれ)としてクローズアップしてきた。どの世代も、多士済々の特長を感じたから取りあげてきたのだが、'84~'85年世代の存在も決して無視できない。
「同世代の活躍は刺激になりますよ。僕は大学時代に世界選手権に出ましたけど、その時に、一緒にいたメンバーの大隣とか岸(=孝之、西武)はプロに入団してからも活躍しているんで、負けてられない気持ちはあります」
そう語っていたのは来季からオリックスの選手会長を務める大引啓次である。シーズン中に聞いた話だが、大学日本代表のキャプテンだった大引は、当時を懐かしみながら同世代へのライバル心を口にしていた。
次々と“世代の顔”が入れ替わって行った“縁の下の力持ち”世代。
さらに、この'84~'85年生まれの世代には「毎年のように、世代のNo.1選手が入れ替わっている」という特徴がある。
例えば、彼らが高校に入学したころ、もっとも注目を浴びたのは泉正義(宇都宮学園=現・文星芸大付→ヤクルト)だった。中学生の関東地区三羽ガラスの一人として名を馳せた泉は、入学後、時の人となった。それが高校2年時は松山商の阿部健太(ヤクルト)が夏の甲子園でベスト4に進み、注目選手に。3年時は左腕から150キロを計測した東北高の高井雄平(ヤクルト)がドラフト1位候補として名前が挙がった。高井は近鉄とヤクルトの競合の末、ヤクルトへ入団した。
プロ入団後、最初にブレークしたのがロッテ(当時)の西岡剛。'05年シーズンの途中からレギュラーを獲得し、ロッテの日本一に貢献した。ドラフトで1位指名された際には「3位指名レベルの選手をロッテが1位で指名しただけのこと」と他球団のスカウトから揶揄された西岡だったが、その評価を覆す大活躍だった。
特に、西岡の活躍以降、この世代は多くの選手が切磋琢磨し、プロ野球界での地位を確立している。次ページにそれをまとめてみた。