スポーツ・インサイドアウトBACK NUMBER
熱いストーヴと玉突き現象。
~イチローの動向と移籍市場の活況~
text by
芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph byNaoya Sanuki
posted2012/11/17 08:00
ピンストライプ姿のイチローを来季も見ることができるのか?
FA市場は玉突き市場だ。
どこかでひとつ玉が動くたび、方々で連鎖反応が起きる。今年もそろそろ、玉突き現象を予想する季節がやってきた。さらに興味深いのは、イチロー、黒田博樹、岩隈久志、上原浩治といった日本人選手がそろってFA資格を持っていることだ。彼らは所属先を変えるのか。それとも、今季と同じチームに残留するのか。答はぼちぼち出はじめているが、意外な結論はこれからも出てくるだろう。
まず気になるのは、イチローの動向だ。
ヤンキースがイチローの残留を望むか否かは、ニック・スウィッシャーの動きにかかっている、といっても過言ではない。
誰がどう移籍すればイチローはヤンキースに残ることになるのか?
プレーオフでは1割6分7厘の低打率しか残せなかったスウィッシャーだが、安定感と破壊力は依然として高い。年齢は32歳。6年連続20本塁打以上の選手は、彼を含めて大リーグに6人しかいない。
そんなスウィッシャーを、フィリーズが狙っている。
ハンター・ペンスをジャイアンツに売り、シェーン・ヴィクトリーノをドジャースに売ってしまったフィリーズは、外野陣が手薄だ。打線の高齢化もあって、スウィッシャーを獲得すれば、おそらく主軸を打たせる。条件も相当によくなるのではないか。
5年総額8000万ドル以上の条件が提示された場合、スウィッシャーが動く可能性はかなり高い。するとヤンキースは、イチローを残したくて、2年総額1000万ドルほどの条件を提示するかもしれない。
2012年のイチローは、ヤンキースのユニフォームを着て67試合に登録され、打率=3割2分2厘、出塁率=3割4分、本塁打=5本、盗塁=14の好成績を残した。
古巣のマリナーズでは95試合、2割6分1厘、4本塁打、15盗塁。
環境の変化がプラスに働いたことは指摘するまでもない。
ただ、今年はテーブルセッターの動きが他球団でも活発だ。ブレーヴスのマイケル・ボーン、ジャイアンツのアンヘル・パガン、レイズのB・J・アプトン、ドジャースのシェーン・ヴィクトリーノらがそろって動くケースは十分に考えられる。