MLB東奔西走BACK NUMBER
“メジャー組”ゼロも悪くない――。
WBCを日本野球の未来に活かす方法。
text by
菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi
photograph byKyodo News
posted2012/11/18 08:01
侍ジャパンを率いる山本浩二監督。WBCでは、NPB選手だけのメンバーで世界との戦いを強いられることになる可能性が高い。
常設化された新生「侍ジャパン」のお披露目となる野球キューバ代表との親善試合を前に、日本人メジャー選手たちのWBC辞退表明が相次いだ。
ダルビッシュ有選手を皮切りに、川崎宗則選手、岩隈久志選手が正式にWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)不参加を表明し、14日になって青木宣親選手の不参加も明らかになった。
これまでの報道を見る限り、侍ジャパンの山本浩二監督は上記の4人に加えイチロー選手、黒田博樹選手の計6選手に参加要請を行なっているようだが、FA選手として契約交渉が控えている両選手とも、来シーズンのことを考慮すれば気軽に参加できる状況ではないのは明白で、余程のことがない限り次回WBCは日本人メジャー選手抜きで戦うことになるだろう。
そもそもこの場でも度々論じているように、メジャー球界の中では、WBCという大会自体が重要視されていないという、否定できない現実がある。当然、そのような環境に身を置く日本人メジャー選手たちも、日本にいたときとはWBCに対する意識が変わり、参加することの重みが薄れてしまってもまったく不思議ではない。
特にダルビッシュを始め今季メジャーに挑戦した選手たちは、誰一人として100%満足できるシーズンを過ごしたわけではないだろう。だからこそ、1年目で得た課題を克服して来シーズンに雪辱を期したいという思いが勝るのは当然だ。
WBC参加を決めた阿部慎之助が抱える、来シーズンへのリスク。
その一方で、NPB選手たちは次々に侍ジャパンへの参加要請を受諾していった。なかでも驚かされたのが、日本シリーズで欠場を余儀なくされるほどの負傷を負った、阿部慎之助選手だ。もしこれが米国であれば、そもそも負傷している選手への参加要請自体、あり得なかっただろう。
もちろん来年3月の第1ラウンドまで時間があるとはいえ、そうでなくても肉体的、精神的な負担が大きい捕手というポジションである。しかも日本シリーズまで他のチーム以上に長いシーズンを戦ってきたことを考慮すれば、侍ジャパンに参加することで負傷の治療も含めた休養時間が短くなることは必至で、来シーズンへのリスクはあまりに高いと言わざるを得ない。
このことは、WBCに対する意識の日米格差を改めて浮き彫りにしたと言える。
そこでNPB選手たちに考えてもらいたいのは、日本人メジャー選手たちがなぜ「辞退」という決断をしたかということだ。