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信頼が生んだ3本柱で日本ハム優勝!
栗山監督が唯一残すCSへの課題は?
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byKyodo News
posted2012/10/03 11:30
札幌ドームで午後5時から公開練習をしていた日ハムナイン。優勝会見では、選手たちがコメントをするたびに満面の笑みを浮かべて喜んでいた栗山監督。
栗山監督はどうやってダルビッシュの穴を埋めたのか?
「打」の柱が中田なら、「投」の柱は言うまでもなく吉川光夫になる。
かねてより懸念されていたダルビッシュの穴をしっかり埋め、瞬く間にエースとなった6年目の吉川の覚醒も、栗山監督の信頼と信用があったからだった。
過去3年間は未勝利。周囲から制球難を指摘され続けてきた吉川に対し、指揮官はこうはっきり告げたという。
「今年、結果を出せなければユニフォームを脱がす。だから、フォアボールを気にせずにお前のボールをしっかり投げろ」
それまで悩みの種だった制球への言及がなくなったことで、吉川は水を得た魚のように快投を披露する。優勝を決めた時点で14勝。防御率も1.71と圧巻の数字を残し、四球の数も1試合1.8と、昨年までの投球が嘘だったかのような安定感を見せつけた。
その吉川は優勝を決めた後、このようなコメントを残した。
「監督が常に僕の背中を押してくれた。感謝しています」
名将・野村克也は「4番とエースは育てられない」と言った。しかし、栗山監督の鉄の意志は、中田を4番に、吉川をエースに育て上げたのだ。
増井と宮西には「無理をさせ、迷惑をかけている」。
3つめの大きな柱は、元から根付いていた幹がさらに太くなった。そう表現していいだろう。
増井浩俊と宮西尚生。
栗山監督自身、「中継ぎが頑張ってくれた」とその要因を語っているように、実績十分のふたりの存在なくして優勝はあり得なかったと言ってもいい。
増井は今季、中継ぎはもちろん武田久の離脱中には守護神を務めるなど大車輪の働きを見せ、最多ホールドポイントのタイトルを手中に収めた。宮西も3年連続で60試合登板を果たすなど健在ぶりを発揮した。
ふたり合わせて90ホールドポイント(10月2日現在)。この驚異的な数字も、見方を変えれば負担を表す。「無理をさせ、迷惑をかけている」と指揮官は申し訳なさそうに彼らの起用について語っていたくらいだ。
とはいえ、前中日監督の落合博満が「シーズンが終わったら休めるんだから。今は働いてもらわないと」と言っていたように、戦いに私情は禁物。選手が悲鳴を上げ始めるシーズン終盤であっても感情を押し殺し、時には非情に徹しなければならない。監督とはそういうものだ。
増井の「監督のおかげ」という言葉に涙を見せる一幕があったものの、栗山監督は選手を信頼、信用し自らの起用を貫いた。その結果、中継ぎ陣はより強固なものとなった。
3つの大きな柱を得て掴んだ優勝。しかし、クライマックスシリーズ(以下CS)を勝ち抜き真のパ・リーグ王者になるためには、もうひとつの柱を形成しなければならない。
栗山監督が真っ先に挙げていた柱――。
斎藤佑樹のひとり立ちである。