プロ野球亭日乗BACK NUMBER
“飛ばない統一球”驚きの都市伝説。
今季プロ野球は投高打低にならない!?
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byHideki Sugiyama
posted2012/03/30 10:31
栗原健太は昨シーズン序盤こそ統一球に苦しめられたが、8~9月と2カ月連続で月間MVPを受賞。最終的には打率.293、17本塁打、87打点の成績を残した。
球宴明けから本塁打を量産し始めた広島の栗原健太。
確かに球宴明けから本塁打を量産した広島・栗原健太内野手の例もある。栗原は7月まではわずか3本塁打だったのが、8月以降は大爆発して14本塁打を量産した。また巨人打線も、7月までの80試合で54本塁打(1試合平均0.68本)だったのが、8月以降の64試合で54本(同0.84本)とわずかながらも数字をアップさせている。
「大きな声じゃ言えないけど、あまりにホームランが出ないから、ボールの質を少し変えたんじゃないですかね……」
例の都市伝説もあってか、そのコーチはまことしやかに、こう推理していた。
打球は飛ばず、投球そのものが低目に集まる“統一球”。
さて、ここからはそんな都市伝説を離れて、少し科学の話を書こう。
流体力学の専門家で、ボストン・レッドソックスで活躍したティム・ウェークフィールド投手のナックルボールの研究なども行なってきた福岡工大・溝田武人教授が昨年、統一球に関する様々な研究を行ない、学会でも発表した。
その中で面白いデータ結果が出ていることを報じた記事が、昨年のサンケイスポーツに掲載されていた。
統一球は、ホームベースを通過する時点で旧公式球に比べて約4cm低い軌道を通る――。
これは投手がマウンドから毎秒40回転で時速144kmのボールを投げた場合に、18.44m先のホームプレート付近までの軌道を計算した結果だった。
同教授によると、統一球は旧公式球に比べて縫い目の高さが0.2mm低く、幅は1mm広くなっている。その結果、旧球より揚力が下がるために、この現象が見られるという。
「この4cmの差は大きいと思いますよ。今までクリーンヒットのはずだったものがボテボテのゴロになり、ゴロは空振りとなる。打者がボールの上っ面を叩いてしまったことによって凡打が増えて、平均打率が下がり、本塁打が激減したと説明できる」
サンケイスポーツ紙上で、この結果を同教授はこう解析している。