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“飛ばない統一球”驚きの都市伝説。
今季プロ野球は投高打低にならない!?
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byHideki Sugiyama
posted2012/03/30 10:31
栗原健太は昨シーズン序盤こそ統一球に苦しめられたが、8~9月と2カ月連続で月間MVPを受賞。最終的には打率.293、17本塁打、87打点の成績を残した。
まずは2005年に導入された“飛ばないボール”にまつわる都市伝説を紹介しよう。
あの頃は、まだ球団別に使用球を決めていて、ある大手メーカーのものが「よく飛ぶ」と評判をとっていた。
実際に'04年にそのメーカーのボールを使っていた巨人は、年間259本塁打と驚異的な数字をマーク。また同じ球を使っていた横浜も194本、パ・リーグでもロッテ以外が使って5球団合わせて777本の本塁打が乱れ飛ぶシーズンだった。
そして'05年に“飛ばないボール”が導入されて、本塁打は激減した。この年の巨人の本塁打数は186本と実に73本減。横浜も51本減って143本塁打で、パ・リーグ5球団の総数も684本と100本近く減少した。
シーズン途中でボールが変質し、本塁打が出るようになった!?
ところが、だ。
2年後の'07年ぐらいから、徐々に本塁打数が増え始め、'10年にはついに巨人の本塁打は226本と200本の大台を突破した。パ・リーグでも'08年に西武が198本塁打を記録するなど、“飛ばないボール”のはずなのに、再び本塁打の時代がやってきたのである。
そこでこんな都市伝説が流れだした。
「実は飛ぶボールを作っていたメーカーが、大量の在庫を抱えていて、ほとぼりの冷めた頃から、それを混ぜて出荷し始めた。その結果、再び本塁打が増えたのだ」
そのメーカー関係者に話の真偽を尋ねると、もちろん一笑に付されたのは言うまでもないが、いまだにこの説を説く関係者は少なくない。
そして“飛ばないボール”が統一球として導入された昨年、シーズンが終わると、再びこんな話が流れてきた。
「選手に聞くと、どうもオールスター明けぐらいからボールの感触が変わったようなんですよ」
ある球団の打撃コーチの話だ。