自転車ツーキニストのTOKYOルート24BACK NUMBER
ニッポンの自転車通勤に新提案!
「自転車ツーキニスト号」が遂に完成。
text by
疋田智Satoshi Hikita
photograph bySatoshi Hikita
posted2012/01/21 08:00
これが夢の通勤スペシャル号だ! ちなみに一緒に写っているのは、この自転車よりももうちょっと前に作った子供です! お父さんの自転車を細かくチェック中なのです
ジュニアスポーツの方が楽だった秘密。
じつは多くの人にとって「ケツが痛い」というのは、正確には「股間が痛い」である。初心者がスポーツ自転車に乗り始めると、必ずまず股間が痛くなる。
その理由は、乗車フォームだ。
初心者は、背中を伸ばしたまま、自転車に乗りがちで、そうなるとケツすなわち臀部というよりも、股間つまり性器周りに体重がかかり、てきめんに痛みがやってくるのだ。
本来は背中を猫背型に曲げるやり方、いわゆる「ラクダのコブ」ポジションをとるもので、それならば腰骨が立って、必然的に、脂肪クッションが効く臀部(おまけに神経も鈍い)に体重はかかり、股間は痛くならない。
ところが、このスポーツバイクフォームが、なかなか初心者にはできない。そして、このフォームに移行する前に、自転車はケツが痛くて(じつは股間が痛くて)……、と自転車自体をやめちゃう人続出、という残念な事態になるわけだ。
ところが、そこに解決策を与えてくれるのが、このセミドロハンドルなのである。
セミドロハンドルとは、セミ・ドロップの語源通り、ドロップハンドルに乗りたいがPTAに禁じられた当時の少年たちが選んだ「半分ドロップ、でもドロップほど下がっていない」というものだった。しかし、問題はその下がり具合ではない。サドルとハンドルの位置関係こそがキモだ。セミドロの場合、この距離が近かった。
アタマをA、手をB、尻をCとして、図を描いてみよう。ドロップハンドルのポジション(または昨今流行りのフラットバーのクロスバイクでも同じだ)は、BとCの間が長い、いわば正三角形のような形となる。
ところが、セミドロの場合、BとCとの間が短い、いわば短い底辺を持つ二等辺三角形の形となるわけだ。必然的に角ACBが60°よりも大きな角度、要は“腰の立った前傾姿勢”になる。
ここのところが重要な部分で、このスタイルならば、特に「ラクダのコブ」だとか、猫背とか、意識せずとも腰骨は必然的に立つ。しかも手の位置が低いことが、ママチャリポジションとは違った意味合いをもたらす。すなわち、体重がきっちりと手と尻に分散されるわけだ。
さらには、握力がなく、手首がまだ弱い少年にとって、縦に握ることができるセミドロポジションは楽だった。これが現在のフラットバー、つまり横握りだと、子供の手首はたちまちくたびれてしまうから。
ジュニアスポーツの少年たちが、誰に教わらなくとも、臀部でサドルに座り、手と尻に体重を分散し、長い距離を平気で走ることができたのは,あのハンドルのおかげだったのである。
考えてみれば、あの25kgを超えようというトンデモない自転車に、それでも子供たちが喜んで長い時間乗ることができたのは、このポジションの恩恵が大きい。そして、そのポジションをもたらしたのは、サドルではなくハンドルだったのだ。
このセミドロハンドルの採用が、この自転車に独特の「お気楽感」をもたらしている。これは、この自転車に日常的に乗って実感する、最も特徴的な部分だ。
(9) 革サドル
そのセミドロスタイルだからこそ採用できる。クラシックでカッコいい革サドルが。
本来、革サドルは堅くて尻が痛くなりがちなんだが、このポジションならさほど気にならない。
普通のサドルでも別にいいし、雨のことなどを考えると、本来、革サドルはどうかと思うけど、やがてこのサドルが自分の尻に馴染み、自分にとっての最高のサドルとなる。
私にとっては、これまた最高のチョイスだった。