自転車ツーキニストのTOKYOルート24BACK NUMBER
ニッポンの自転車通勤に新提案!
「自転車ツーキニスト号」が遂に完成。
text by
疋田智Satoshi Hikita
photograph bySatoshi Hikita
posted2012/01/21 08:00
これが夢の通勤スペシャル号だ! ちなみに一緒に写っているのは、この自転車よりももうちょっと前に作った子供です! お父さんの自転車を細かくチェック中なのです
(7) 通勤に必須のビジネスバッグをどこに置く?
通勤自転車としては、荷物(バッグ)の置き場所は必須だろう。もちろん背中に背負うという選択肢もある。現実としてロードバイクやクロスバイクに乗る、多くの人はそうしていることだろう。ただ、夏場は背中にかなりの汗がたまってしまうのが困りものだ。
そこで車体に装着するわけだが、ジャパン・スタンダードはもちろん前カゴである。しかし、重量物を置くとハンドルが取られがちになる。ここを勘案して安定感のあるリアキャリアとした。
そもそもヨーロッパでは、荷物はリア置きが主流だが、これは、ヨーロッパの自転車が、日本のママチャリと違って、前傾姿勢が基本になっていることと無関係ではない。そして、この自転車もママチャリポジションではなく、欧州型の前傾姿勢なのだ。リアは必然ともいえる。
そして、ビジネスバッグに特化することで軽く作る。そういう考えの末に完成したのが、写真の自転車通勤専用キャリアというわけ。
(8) そして、何といっても「セミドロ」ハンドル!
そして、今回、最重要だったのが、このハンドルの形状、通称「セミドロ(セミドロップ)ハンドル」である。
じつはこれこそが今回の一番の売り物であり、なおかつ「クロスバイク(通常のフラットバーを用いる)」と完全に異なる部分なのだ。
アイディアのヒントは、じつは、昔日の「ジュニアスポーツ自転車(詳しくは私の旧サイトにて)」にあった。
憶えていらっしゃるだろうか。昭和40年から50年にかけて当時の少年たちが熱狂した「ジュニアスポーツ車」のことを。
フラッシャーや、リトラクタブルライト、巨大変速ボックスなどで満艦飾となった、これらの恐竜のような自転車は、やがて高度成長の終焉とともに歴史の狭間に消えていくんだけど(ま、それは必然。なにしろこれらの自転車の重量は25kg以上にもなっていたんだから)昨今になって、ふと気づいたことがあった。
あれ? あの自転車って、そういえばケツが痛くなりにくかったな、ということだ。
思い起こすと昭和50年代の少年・ヒキタは、ブリヂストンのジュニアスポーツ自転車「ヤングウェイ」に乗っていた。やがて同社の入門用サイクリング自転車「ロードマン」へと、実に定向進化的な乗り継ぎを果たすのだけど、その乗り換え時に、不思議なことがひとつあった。
こっちの方がケツが痛い! ということだ。
少年ヒキタは「やっぱ大人用の自転車はサドルが堅いからかな、長い距離が乗りにくくなったなぁ」と思った。ところが(今でも感触を憶えているけど)指で触ってみると、不思議なことにヤングウェイとロードマンのサドルの堅さは、ほぼ同じだったのだ。
おかしい。いや、おかしいといえば、もうひとつある。
ロードマンは廉価版とはいえ、ちゃんとしたサイクリング車、つまりはランドナーだったから、長い距離を走れるはずだった。で、その通り、自転車少年だった私は、ほとんど週末ごとに往復80km程度のサイクリングに出かけていった。
ところが、面妖なことに「ヘンだなぁ、ヤングウェイの方が楽に走れたような気がする……」と、少年ヒキタは思っていたのだ。
ジュニアスポーツ車というのは「スポーツ」の名とは裏腹に重かった。すでに述べた通りママチャリ以上の25kg程度もあった。これに対してロードマンは15kgを切る。ディレイラーは、ヤングウェイ5速に対して、ロードマンは2×6速。ブレーキも、クランクも、何をとっても、ロードマンの性能がヤングウェイを下回ることなんて、何一つない。
それなのになぜ?
少年ヒキタは、やがて「馴れ」ですべてを乗り越えていき、ロードマンからユーラシアへと、再び幸せなサイクリング少年の道を邁進していくのだが、それにしても疑問は残ったままだった。ヤングウェイの方が楽に走れた。あれは気のせいだったのだろうか……。
その謎が最近になって解けた。
気のせいではない。秘密は、意外なことにサドル方面ではなく、ハンドル方面、セミドロハンドルの形状そのものにあったのだ。