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モウリーニョは攻略の方程式を示せず。
バルサに完敗したレアルが陥った罠。
text by
工藤拓Taku Kudo
photograph byGetty Images
posted2011/12/12 11:50
バルセロナの3点目のゴールが決まった瞬間。試合後には「試合を落とした理由は運だけだよ。1-0になった後、何度か2点目を決めるチャンスがあった。クリスティアーノ(ロナウド)に数度あったチャンスが決まっていれば……」と語ったモウリーニョ
染みついた速攻の動きが、逆に選手たちを罠にはめる。
ボールを持ったらとにかく縦へ。
速攻が最大の武器であるがゆえに縦への意識が染みついているレアルの選手達は、特にバルサ戦になると攻撃のスピードを上げすぎ、ミスからボールを失う傾向が強くなってしまう。周囲のフォローなど目もくれず、ひたすらドリブルで縦に突進し続けるC.ロナウドやディマリアはその典型だ。それでも単独でゴールを奪ってくれるのなら良い。だがバルサレベルの守備陣を相手に単独で勝負を挑んでも、ほとんどは2~3人に囲まれてボールを奪われるか、良くてファウルを獲得できるのが関の山である。
そうやって少ないチャンスやセットプレーからの空中戦に賭けるのも1つかもしれない。だが、それが狙いならタメを作れるエジルやポストプレーヤーのベンゼマを起用する意味がないし、そもそも守備のリスクを背負って4-2-3-1で戦う意味自体がなくなってしまう。ならば昨季のコパ・デル・レイ決勝のようにトリボーテで中盤のボール奪取能力を高め、攻撃は3トップの突破力に任せた方がずっと理にかなっている。
この敗因がモウリーニョのゲームプランにあったのか、単に選手達がピッチで暴走してしまっただけなのかは分からない。
いずれにせよ、ボールキープによるゲームコントロールと追加点のチャンスを自ら放棄したレアルは、53分に逆転を許した時点で万策尽きた。
バルサにある程度守備を固められたとたん、速攻とセットプレーでしかゴールを奪えない攻撃力の限界を露呈したのである。
打倒バルサにはボールポゼッションと遅攻の向上が不可欠。
時間帯を限定してハイプレスをかけ、ボールキープの時間も作って体力を温存しつつ、遅攻でチャンスを作ることも試みる。そんなモウリーニョのゲームプランは結局、開始10分間のハイプレスを除いて全く機能しなかった。
今後レアルが本当の意味でバルサと肩を並べるためには、ボールポゼッションと遅攻の向上が不可欠だ。ポゼッションなしにハイプレスを90分間続けるのは不可能だし、遅攻で相手の守備をこじ開けることができなければ、リードを許した時点で勝機はなくなってしまう。
それでもバルサに勝ちたければ、残された選択肢は1つ。チェルシーやインテル時代にやった通り、ペナルティーエリア内を10人で固め、カウンター1発に賭けるしかない。だが、レアル・マドリーというクラブがそのような戦い方を許さないのはモウリーニョ本人がよく分かっている。