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ヴォルフスブルク残留を選択した、
長谷部誠が見つけた“第三の道”。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byTakuya Sugiyama
posted2011/08/13 08:01
開幕戦の対ケルン戦、右サイドバックで先発出場し、84分までプレー。3-0の勝利に貢献した
今シーズンは長谷部誠にとって、これまでとは違ったシーズンになるかもしれない。
昨シーズンは2部降格の危機に瀕して、最終節にようやく1部残留を決めるありさまだった。長谷部自身の出場試合数も23試合で、シーズン途中に加入した最初のシーズンを除けば最も少ない。
試合数だけではない。アシストの数も前のシーズンより5つも減らしてしまった。長谷部がヴォルフスブルクを去るのではないかという声が聞こえてきたのも当然だろう。
それでも、今シーズン限りで切れるはずだったクラブとの契約を2年延長した。ヴォルフスブルクの街で戦い続けることに決めたのだ。
監督の指示をこなすのではなく、自分の意思で行動する。
そんな長谷部が、これまでとは変わった様子を見せている。記者からの質問への答えは、明確になり、すらすらと口をついて出てくるようになった。試合のあと、練習のあとで取材を受けるときにも、リラックスしているように映る。試合に勝ったあとでも、敗れたあとでも、厳しい練習を積んで疲労が残っている状態にあっても、変わらない。自信に満ち溢れていると言い換えても良いかもしれない。長谷部自身も手ごたえを隠そうとはしない。
「今シーズンは良い準備が出来たなという感覚が自分の中であるんですよね。合宿でも相当追い込めたし。その中でも高い意識を持ってやれたので」
意識して、心がけを変えたのだ。
「試合に向けてもそうだし、日々の練習からもそうだし。監督に何かをやらされているんじゃなくて、自分からやろうと思っているんです」
昨シーズンの終盤、優勝した2008-2009シーズン以来となるマガト監督の復帰が決まったとき、顔をしかめる者もいたという。しかし、選手は監督を選べない。選手に選べるのは、どのような気持ちで戦うのかだけである。
試合ごとに変わるポジションにも臨機応変に対応。
本人の充実ぶりは、監督の起用法にも表れている。これまでマガトのもとで務めることの多かった右MF以外のポジションでプレーすることが、今シーズンに入ってからは多く見られる。右MFでプレーできる選手が新たにやってきたこととも関係しているのだが、プレシーズンでは主に左MFとしてプレーし、リーグ開幕の1週間前のドイツカップではトップ下で先発したかと思えば、右サイドバックとしてリーグ開幕の笛を聞いた。
トップ下で先発したドイツカップのライプツィヒ戦では、前半途中でボランチの選手交代が行なわれたため、トップ下にいたのは31分間だけだったが、ゴール前に飛び出したり、ドリブルでペナルティエリアに進入したりと、躍動感のあるプレーを見せた。「もう少し長く、プレーしたかった」と長谷部自身も語っていたほどだ。