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ヴォルフスブルク残留を選択した、
長谷部誠が見つけた“第三の道”。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byTakuya Sugiyama
posted2011/08/13 08:01
開幕戦の対ケルン戦、右サイドバックで先発出場し、84分までプレー。3-0の勝利に貢献した
鬼軍曹のマガトまでもが長谷部の献身的なプレーを絶賛。
ケルンとの開幕戦では一転、DFラインに入った。試合の2日前に監督から呼び出され、薫陶を受けている。
「オマエは、良いテクニックを持っているし、視野も広い。サイドバックとして攻撃の起点になってくれ」
ゴールにつながるような決定的なプレーこそ見せられなかったが、チーム最多のボールタッチ数を記録して、守備でも体を張り、無失点での勝利に貢献した。試合後にマガト監督も名前をあげて、長谷部の活躍について褒めたたえている。
「75分まで、長谷部は本当に、本当に良いプレーを見せてくれた。その後は残念ながらちょっとラインコントロールに苦しんだが」
鬼軍曹の異名をとり、選手を上から抑えつけるのがマガト流だ。試合のあと、厳しい注文をつけるのはいつもと同じ。驚くべきは、「本当に、本当に」と強調してまで、長谷部のプレーを評価していることだろう。
ドイツ語が不得手な選手とは英語でコミュニケーションを。
ただ、ラインコントロールに苦しむことは、長谷部自身もわかっていた。興味深いのは、課題を明確にとらえている点だ。
「斜めから入ってくるボールは、相手も同時に見えるから守備がしやすい部分があるけど、自分と対面する位置にいる相手からだと、自分が見ている間にパスを出されたりするから……。その辺がラインコントロールの難しい部分かな」
自らがサイドバックとしてプレーする際の課題を把握していたからこそ、試合中に右側のセンターバックを務めるデンマーク代表のキアルと何度も声をかけあっていた。しかも、ドイツ語を上手く話せないキアルにあわせて、英語を使って。
また、攻撃面でも自身が取り組むべきことが、長谷部にははっきりと見えている。本人は日本代表のように細かくパスをつなぐサッカーが好きなのだが、ヴォルフスブルクではロングボールを主体としたリスクを冒さないサッカーをするように求められている。
ともすれば、ヴォルフスブルクの試合ではロングボールがピッチ上を何度もいきかう退屈な試合になりがちだし、相手からしてみれば的を絞れる分だけ、対応もしやすくなる。
これまでも、ヴォルフスブルクでのサッカーに取り組むべき際には、細かいパスをはさむなど、リズムを変えるプレーをしたいと長谷部は口にしていた。とはいえ、実際にどうすればいいのか。具体的なイメージを語ることはなかった。