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アタッカー全盛の今だからこそ!!
“現代的パッサー”遠藤保仁の再評価。
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph byMasahiro Ura
posted2011/07/15 10:30
運動量が豊富で、攻守において貢献度が高く、Jリーグベストイレブンに2003年から8年連続で選ばれ続けている
攻めの姿勢がうかがえる遠藤流バックパス。
相手が近くにいるとき、無理に反転をしたら、成功するかもしれないがボールを失う可能性も高い。ならばシンプルにDFにバックパスをして、その間に素早いバックステップやサイドステップで相手から少し離れたポジションを取り、そこからボールを受けた方が間違いなく楽に次のプレーを始められる。
こういう「作り直し」の動きを、遠藤は多用する。
反転のような派手さはないが、成功率でいえばはるかに“遠藤流”の方が高い。もちろん場合によっては、強引な反転も必要ではあるが。
十分なスペースがなくても、“点”があればパスは受けられる。
では、こうやって前を向いてボールを受ける状況を作れたら、次に何が起こるか?
遠藤は「狭いエリアにいる味方へのパス」によって攻撃を一気に加速させる。それが3つ目のプレーだ。
7月10日の大宮戦でも点にこそならなかったが、中央の密集地帯にいた宇佐美貴史の足元にパスを合わせてチャンスを作った。
遠藤は「相手に囲まれていても、コースによってはパスを受けられる」と考えている。スペースがないといっても、逆をついたり、背後にまわれば、相手の反応は遅れるからだ。そのわずかな“点”を狙って、遠藤はパスを出す。
この3つの要素をものすごく簡単にまとめれば、バルセロナのシャビに近いということだ。一発のスルーパスを狙うといった古典的なゲームメイカーではなく、どんどんパスコースに顔を出してシンプルに攻撃に関与するという現代的パッサーである。
最近のJリーグでは大宮の東慶悟やセレッソ大阪の清武弘嗣など、サイドのエリアで勝負できるアタッカーが活躍している。バイエルンへの移籍が決まった宇佐美もそうだ。本質的にはドルトムントの香川真司もそうだし、話をサイドバックに広げれば、インテルの長友佑都とシャルケの内田篤人は同じ流れにいる。