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甲子園コンプレックスはもう克服!?
日本文理が見せた地方勢の意地。
text by
中村計Kei Nakamura
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2009/08/20 12:50
「悲願の大優勝旗の白河越え」という言葉も忘れられた。
北海道・東北勢が優勝する前、まだ「悲願の大優勝旗の白河越え」という言葉があったころ、光星学院(青森)の金沢成奉監督がこんな話をしていたことがある。
「東北勢が勝てない理由はひとつですよ。本気で全国制覇できると思っている監督がいないからです」
また、岩手県のある監督はこう嘆いていた。
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「どこかが早く優勝してくれないですかね。雪国は勝てないというコンプレックスを克服しないと、どうにもならない」
それらの心の壁が、東北を跳び越え、最北の都道府県である北海道勢が優勝したことで、一気に取り払われたのだ。
優勝の可能性は全国へ。ベスト8の全校が優勝候補だ。
昔は月を見て、あそこに行こうなどと考える人は皆無だった。だが、誰かが行けると思ったからこそ、行けるようになったのだ。今ではしかるべき努力をすれば誰もが月にたどり着けると信じている。
高校球界も同じだ。北海道勢が頂点に立つことなど、数年前まではありえないことだと思っていた。だが、その不可能と思われていた登頂を駒大苫小牧が果たしたことで、今では誰もが全国のトップに立てるものだと思っている。
できると信じてやるのと、難しいかなと疑ってやるのでは、同じ努力をしたとしても獲得できる距離に雲泥の差が生まれる。土壇場での粘りも違ってくるだろう。
今日でベスト8がでそろう。チーム間に多少の力量差はあるだろうが、精神の境がなくなった今、どのチームが頂点に立ったとしても驚くことではない。