Column from SpainBACK NUMBER
隣の芝生は青く見える。
レアル首脳陣の迷走ぶり。
text by
横井伸幸Nobuyuki Yokoi
photograph byYutaka/AFLO SPORT
posted2008/12/09 00:00
新しい戦力が必要になったとき、バルサはカンテラにも目をやる。他方、レアル・マドリーはまず外部に選手を探す。カンテラの選手は、余程のことがない限り考慮しない。
「わしらは雌鶏を持っている。それなのに卵を外へ買いに行く」
去年のガゴの入団に際し、レアル・マドリーの名誉会長ディ・ステファノはこう嘆いた。言い得て妙だ。
ところが監督のシュスターもスポーツディレクターのミヤトビッチも、名誉会長に耳を貸さない。ちなみにシュスターは、過去レバンテの監督時代もヘタフェの監督時代も、カンテラ出身の選手を使おうとしなかった。
リスクがあるからだとミヤトビッチはいう。
「どんな大物であろうと、レアル・マドリーではレギュラーの座は約束されない。よってカンテラ上がりの若者をトップチームに入れることは、1シーズン、ベンチに座りっぱなしにさせる可能性がある。それでは成長過程にある選手がダメになる。リスクは冒せない」
だが、そんなリスクは監督の工夫次第でなんとでもなるのではないか。たとえば、トップチームで出番がないときは、Bチームの試合に出してやればいい。23歳以下の選手で登録がBチームのままになら、行き来は自由だ。
トップチームのプレッシャーもリスクに数えるなら、こちらは起用法ひとつで和らげてやれる。バルサのグアルディオラが今季ボジャンの出番を大幅に減らしたのはそのためだ。「ボジャンは見限られた」という人もいるけれど、彼を当てにしていることは、グアルディオラ自身が何度も口にしている。
かつてレアル・マドリーのカンテラは「ラ・ファブリカ(工場)」と呼ばれ、優秀な選手をどんどん輩出していた。生産能力自体はいまも変わらないが、その商品は然るべき評価と正しい扱いを受けていない気がする。優れた者ほどトップチームで活躍する日を夢見ているのに。