Column from SpainBACK NUMBER
隣の芝生は青く見える。
レアル首脳陣の迷走ぶり。
text by
横井伸幸Nobuyuki Yokoi
photograph byYutaka/AFLO SPORT
posted2008/12/09 00:00
シーズン前半戦のメインイベント、バルサ対レアル・マドリーはいよいよ今週末。このタイミングで、“カンテラ”という視点から両クラブの姿勢を比べてみたくなる事件が起きた。レアル・マドリーの育成部門ディレクター、ミチェルの辞任だ。
ミチェルはレアル・マドリーの“グアルディオラ”に当たる、ホームメイドの元名選手。クラブ愛は非常に強い。そんな彼が突然辞める決心をしたのはカルデロン会長の態度が原因だった。
本人がラジオ番組で雄弁に語ったところによると、カルデロン会長はカンテラに全く興味を持っていない。いわく、毎シーズン撮るカンテラの集合写真に収まったのは任期1年目だけ。去る8月、マドリー空港で乗客150人以上が亡くなる飛行機事故が起きた際は、クラブの少年選手の母親が命を落としたにも拘わらず、全く気に懸けなかったという。ミチェルらスタッフは少年と家族を心配し、14時間も付き添ったというのに。
そのくせ体面を気にして、文句だけは付ける。
「この前も『バルサのカンテラはうちよりしっかりやっている。ちゃんと結果を出している』などと言っていた。わたしの働きに不満があるなら、メディアを通してではなく、面と向かってそう言うべき。レアル・マドリーを動かしている人が、クラブではなく自分のことを第一に考えているのが悲しい」
これでミチェルの堪忍袋の緒は切れてしまったようだ。
カルデロン会長がバルサを羨むようなことを言うのは、トップチームだけを見ているからだろう。(何しろカンテラには無関心なのだから)
確かにカンテラ出身でトップチームデビューを果たした選手は、最近のレアル・マドリーにはほとんどいない。過去5年を振り返っても、ソルダードにミゲル・トーレス、そして先月のブエノぐらい。デビュー後を見ても、ベンチで無視され続けたソルダードはヘタフェへの移籍を選び、ブエノはすぐBチームに戻され、ミゲル・トーレスは今季ほとんど出番なし。
一方で、バルサはライカールトが28人もの若者を試し、うちジョルケラ、メッシ、ボジャン、ビクトル・サンチェス、ペドロはそのままトップチームに定着した。今年はセルヒオ・ブスケッツがこの仲間入りを果たしている。
しかし、客観的にいって、レアル・マドリーのカンテラがバルサのそれに劣っているとは思えない。レアル・マドリーが育てたアルメリアのネグレド、ヘタフェのグラネロ、ビジャレアルのディエゴ・ロペス、バレンシアのマタを見れば一目瞭然だ。彼ら全員、昨季も今季も非常に素晴らしい。この夏レアル・マドリーが買い戻したハビ・ガルシアとデラレッドも、昨季はそれぞれオサスナとヘタフェで大いに活躍した。となると、問題があるのはカンテラ上がりを戦力視するか否か、つまりは補強の方針となる。