ベースボール・ダンディBACK NUMBER
数字上は日ハム有利で巨人不利!?
~主軸依存度で占う日本シリーズ~
text by
田端到Itaru Tabata
photograph byHideki Sugiyama
posted2009/10/28 13:30
ほんの数試合の短期決戦でも、チームの長所と短所は表出する。短期決戦にこそ表れると言ったほうが正しいかも知れない。
以前、当コラムで巨人・原辰徳監督の采配を取り上げ、試合の勝負どころを見極める読みと決断力が、早いイニングの代打策に象徴されていると書いた。
中日とのクライマックス・シリーズ第2戦で見せた、「4回の代打・大道起用」の2点タイムリーなどは、まさに原監督ならではの勝負勘を示した采配で、今季の巨人の戦い方を象徴する場面だった。
しかし日本シリーズに関しては、巨人不利、日本ハム有利と見られる「法則」がある。
日本シリーズ向きの打線とそうではない打線の違いとは?
日本シリーズ向きの打線と、日本シリーズ向きではない打線があるのを知っているだろうか。
各打者の役割が明確で、ポイントゲッター(打点を稼ぐ役)が決まっている打線は、短期決戦ではうまく機能しない場合がままある。そのポイントゲッターを徹底マークされて、打線を寸断されると、得点力がガクンと落ちてしまうからだ。
一方、特定の打者に頼らず、どこからでもチャンスメイクして、どこからでも点を取れる打線は、短期決戦に強い。ひとりふたり不調な選手、いわゆる“逆シリーズ男”が出ても、ほかの打者がカバーして得点することが可能だ。
このような打線のタイプ分けは、「チーム内の打点バランス」によって定義できる。巨人と日本ハムで説明してみよう。
●巨人……チーム得点650。打点トップは小笠原の107打点。2位はラミレスの103打点。
主軸ふたりの打点を合計すると、107+103=210。
これをチーム得点で割ると、210÷650=0.323。
つまり、小笠原とラミレスの打点が、チーム総得点の32.3%を占める。
これをここでは「主軸依存度」と呼ぶ。
●日本ハム……チーム得点689。打点トップはスレッジの88打点。2位は稲葉の85打点。
主軸ふたりの打点を合計すると、88+85=173。
これをチーム得点で割ると、173÷689=0.251。
つまり、スレッジと稲葉の打点が、チーム総得点の25.1%を占める。
ポイントゲッター型打線vs.分散攻撃型打線の短期決戦。
こうして計算する主軸依存度が30%以上なら、そのチームは「ポイントゲッター型打線」。巨人はこれだ。
主軸依存度が30%未満なら、そのチームは「分散攻撃型打線」。日本ハムはこっちだ。上記ふたりのほかにも、小谷野82打点、高橋75打点、金子66打点と続く。
この分け方で過去の日本シリーズを見ていくと、明確な傾向が浮かび上がる。「ポイントゲッター型打線」vs.「分散攻撃型打線」の対決になった日本シリーズは、圧倒的に「分散攻撃型」が強いのである。
1991年以降、この組み合わせになった年は8度ある。