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プレミア決戦へのウォームアップ!?
シャルケを格下扱いで完勝のマンU。
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byMan Utd via Getty Images
posted2011/05/05 12:00
後半立て続けに2ゴールを決めたアンデルソン。準決勝で敗れはしたが日本人サッカー選手の可能性を大いに感じさせてくれた内田篤人には、胸を張ってもらいたい
第1レグに、CL準決勝とは思えぬ一方的な内容で先勝したマンチェスターU。ホームにシャルケを迎えた第2レグでは、これまたCL準決勝とは思えぬ布陣をピッチに送り出した。
アレックス・ファーガソン監督は、4日後に迫ったチェルシーとのプレミアリーグ頂上対決を意識し、大幅な戦力温存に踏み切ったのだ。
しかし、ひいき目に見ても「1.5軍」としか言えない先発イレブンでも、マンUの優位は変らなかった。
26分にアントニオ・バレンシアが先制ゴールを流し込むと、その5分後には、ダロン・ギブソンがペナルティエリアの外から追加点。35分にホセ・マヌエル・フラドの強烈な一発を浴びたが、72分と76分にアンデルソンの2ゴールでダメを押し、マンUが最終スコアも一方的な4対1(合計6対1)で決勝進出を決めたのだった。
直前のアーセナル戦と比べて8名もの主力選手を下げたマンU。
キックオフ前のファーガソンは、戦力温存についてマイクを向けられると、「自分の判断が正しいことを願っている」とナーバスな表情を浮かべた。シャルケとの間には、明らかな実力差と初戦での2点差があるとはいえ、直前に行われたアーセナルとのリーグ戦から8名を入れ替えたのだから、ギャンブルに対する不安は当然だろう。
前線と最終ラインの要である、ウェイン・ルーニーとリオ・ファーディナンドはスタンドで完全休養。両名の相棒である、ハビエル・エルナンデスとネマニャ・ビディッチはベンチスタート。エドウィン・ファンデルサールの前に並んだ4バックでは、20歳でもレギュラー格のラファエルの存在が心強く思われるほどだった。対するラルフ・ラングニック監督は、相手のメンバー表を見て微かに期待が膨らんだことだろう。
「初戦での反省を生かす」はずのシャルケだったが……。
実際、シャルケの立ち上がりは悪くなかった。
「初戦での反省を生かす」と言っていたラングニックの発言は、着実に実行に移されているように見受けられた。「2+3」に編成された中盤は、第1レグとは違い、完全にマンUの支配下に置かれることはなかった。開始早々の8分には、シュートは枠を外れたが、フラドのパスからジェファーソン・ファルファンがチャンスを手にした。
プレスの甘さも改善されていた。
15分、アンデルソンとの五分五分のボール争いで、キリアコス・パパドプーロスとアレクサンダー・バウムヨハンが揃って身を投げた場面が、シャルケのボールへの意欲を象徴していた。マイボールとなって後方から内田篤人が上がる際には、前方のファルファンが内側に絞り、敵の左SBジョン・オシェイにインとアウトのどちらをカバーするかの選択を強いることで、貴重な時間とスペースを手に入れることに成功していた。シャルケ唯一の得点も、内田が右から放り込んだクロスがきっかけだった。