甲子園の風BACK NUMBER
「なぜ大阪桐蔭は苦戦している?」エース&主将が明かした“名門の今”…夏の甲子園“最後の優勝”は7年前、新たなライバル校も出現「カギは世代No.1投手」
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柳川悠二Yuji Yanagawa
photograph byYuji Yanagawa
posted2025/04/19 11:05

大阪桐蔭エースの森陽樹(左)、主将の中野大虎
だが、一強時代を築いてきた大阪桐蔭も最後に甲子園を制したのは22年の春だ。昨春は2勝したものの西谷監督の母校である報徳学園に敗れ、昨夏は小松大谷を相手に0対3と完封負けを喫する。
そしてこの春は、大阪桐蔭はセンバツ出場を6年ぶりに逃した。もちろん、これほどの頻度で甲子園にやってくる学校は全国を見渡してもなかなかいない。だが万が一、今夏の甲子園も逃すようなことがあれば、一時代の終焉を口にする者も増えるだろう。
低反発バットの影響か
大阪桐蔭の強みは、全国の有望中学生に目を光らせるスカウティング力であり、圧倒的な打力にあった。身体能力に長けた球児が金属バットの特性を最大限活かすように強く振り、初回から相手の戦意を喪失させるような打撃戦を仕掛けるのが大阪桐蔭だった。勝つ時は豪快に、敗れる時は劇的に——そんな大阪桐蔭に異変が起き始めたのは昨春頃からだ。
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ビッグイニングを作るようなケースが少なくなり、劣勢になったときに試合をひっくり返すような一発も出ない。昨夏、小松大谷の西川大智に、わずか92球で完封を許したのは大阪桐蔭の低迷を象徴するような出来事であった。
そして大阪桐蔭の成績が低迷し始めたタイミングは、新基準バットの導入と重なる。低反発バットの影響を最も受けた学校かもしれない。
昨秋の背番号は森が「1」で中野は「7」。打線が心許ない現状、両者がマウンド上で大車輪の活躍をしなければ、昨秋の大阪大会決勝で敗れた履正社はおろか、突出したスカウティング力で地力をつけてきている大阪学院大高に足をすくわれる可能性すらある。
キーマン2人…本人の証言
主将の中野は言う。
「意地でも、夏は負けられない。まずは絶対に大阪を勝ち抜く。甲子園に行くことができたら、ここ(日本代表候補合宿)に来ているメンバーと戦う機会があると思う。ここでの経験を活かして戦いたい」
大阪桐蔭復権のカギを握るのはやはりエースの森だ。1年秋のデビューが鮮烈だったからこそ、森に対する期待値は膨らみ、結果が伴わなくなれば「早熟」だの、「完成されていてのびしろがない」などと言われてしまう。それは2学年先輩の前田悠伍(現・福岡ソフトバンク)も通ってきた道である。最後の夏の結果で、そうしたネガティブな声を跳ね返すしかない。