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「大谷翔平や藤浪晋太郎に抜かれて…劣等感を」中学時代は日本No.1投手だった“消えた天才”、今何している?「もし過去に戻れるなら…」本人の回答
posted2025/02/21 11:03

大谷翔平世代の中学日本代表エース・横塚博亮さんは桐蔭学園に進学した
text by

中村計Kei Nakamura
photograph by
Asahi Shimbun
大谷翔平や藤浪晋太郎、鈴木誠也らがいる1994年度生まれ世代。中学日本代表のエースだった天才・横塚博亮は今、何をしているのか。【全3回の3回目/1回目から読む】
◆◆◆
2012年の選抜高校野球大会(春の甲子園)初日、第3試合のカードは大阪桐蔭と花巻東だった。高校球界の2大スターだった藤浪晋太郎と大谷翔平の対決がいきなり実現することになったのだ。
「中学時代は勝っていた」藤浪と大谷が…
横塚博亮にその試合のことを尋ねると「めっちゃ記憶にあります」とやや興奮気味に振り返った。横塚はテンションが上がると「めっちゃ」を連発する癖があった。
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「3月20日ぐらいですよね。確か」
ほぼ正解だった。実際は3月21日である。
「寮に新入生が入ってくるので、部屋替えしたタイミングだったと思うんですよ。桐蔭の近くに『湯けむりの里』っていうスーパー銭湯があって、そこにいた記憶がめっちゃあるんです。そこの露天風呂にテレビがあって、そこで観てた記憶がめっちゃあって。雨が降る中。それで大谷が1打席目にホームランを打って。そのときにめっちゃ劣等感を感じましたね。自分が知っているメンバーが甲子園で戦っていて、片や自分は風呂に浸かっていて。自分がいられないところにあいつらがいるというのはすごく嫌でした」
2回裏、先頭打者として打席に立った「四番・ピッチャー」の大谷は藤浪が投じた5球目、ややインコースに低めに入ってくるスライダーをとらえ、右中間スタンドに運んだ。
横塚が感嘆する。
「片手1本で持っていった感じですよね。あれだけはめっちゃいまだに記憶にあります。当時の映像を観なくても、あの映像はぜんぜん出てきますね」
中学時代、自分より下だと思っていた選手たちをそのときの横塚は仰ぎ見ていた。