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「笑われてもいいじゃないか」“ぬるま湯クラブ”だったカターレ富山の意識改革「これだけ立派な企業が…なんてもったいないんだ!」左伴繁雄69歳の情熱
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宇都宮徹壱Tetsuichi Utsunomiya
photograph byTetsuichi Utsunomiya
posted2025/01/27 17:01
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クラブにかかわる人々の“意識改革”を促したカターレ富山の左伴繁雄社長。サポーターからの支持も厚い
その後の懇親会でも、漫然と酒を酌み交わすようなことはしない。地元にJクラブがある意義を語り、そこに投資することの意義を説き、一緒に富山を盛り上げることを促す。左伴は社長であると同時に、トップセールスマンでもあり続けた。
「熱量をもってお話をしながら、脈がありそうな法人さんの名刺を後日、営業担当に渡すんです。電話営業や飛び込み営業よりも、そっちのほうがよっぽど確度が高い。自分からどんどん発信して、効率的に営業をかけていく。そういうことを地道に続けてきましたし、社員たちにも求めてきましたね」
「笑われてもいいじゃないか」左伴が促した“意識改革”
真面目で勤勉でありながら、自己主張や自己表現は控えめ。富山の人と接していると、そんな印象を受ける。しかしスポーツビジネスの世界では、そうした控えめなメンタリティが不利に働くと、左伴は考えていた。
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「プロスポーツクラブなのに、みんな口下手で奥ゆかしくてアピールできない。県民性なんでしょうかね。『こんなこと言ったら、笑われるんじゃないか』って気にする人が多いんですよ。でも、いいじゃない。笑われたり、馬鹿にされたりしても。関心を持たれなくなるより、よっぽどいい。そのことは、さんざん言いまくりました」
そこで左伴が社員とスタッフに求めたのが、発信の頻度と量を増やしていくこと。クラブ公式のみだったXのアカウントは、営業とアカデミーとスクール、そして今年からはマスコットのライカくんが新たに加わった。
左伴もまた、自身のアカウントから発信するだけでなく、KNBラジオのレギュラー枠と富山新聞の連載を持ち、TVやイベントにも積極的に出演している。
「社長と営業とアカデミーとスクール、それぞれの立場からSNS発信していけば、もう少しファンの人たちに近づくことができるだろうと。それとは別に、地方では新聞やTVやラジオも重要。TVの場合、スポーツニュースだけじゃなくて、おばちゃんや子供さんが見るような番組にも出ていかないと、母数は増えていかないですよ。もちろん、学校や養護施設に選手が訪問することも重要です」