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「笑われてもいいじゃないか」“ぬるま湯クラブ”だったカターレ富山の意識改革「これだけ立派な企業が…なんてもったいないんだ!」左伴繁雄69歳の情熱
posted2025/01/27 17:01
text by
宇都宮徹壱Tetsuichi Utsunomiya
photograph by
Tetsuichi Utsunomiya
「こんなに雪深い土地に…」なぜ富山に向かったのか?
カターレ富山は、当時JFLに所属していた北陸電力サッカー部アローズ北陸、そしてYKK APサッカー部が合併して2007年に設立。2008年のJFLで3位となり、翌09年にJ2に昇格した。しかしJ2に所属していた6シーズンは、いずれも下位に低迷。2014年には22位(最下位)でJ3に降格することとなった。
J3での成績は、2018年(11位)を除いて1桁順位をキープするも、昇格条件の2位以内にはなかなか届かない。毎年のように監督が変わり、2018年以降は平均入場者数が3000人を割り込むようになってしまった。
低迷の要因を挙げればキリがない。が、プロフェッショナルなクラブ社長が不在だったことが大きかった。歴代社長は、北陸電力やインテックという主要株主からの出向者。前社長も北陸電力の出身だった。
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「(2020年の)11月か12月だったんですけど『スポーツがわかる社長を呼ぼう』という話になって、それで僕のところに打診がありました。それで年が明けて、久和(進)会長と富山でお会いすることになったんです」
面談が行われたのは、2021年1月9日。現地特有の大雪に見舞われ、ホテルから一歩も出られない状況の中、スーツに長靴姿の会長が訪ねてきた。のちに左伴は、久和をはじめ富山の関係者が「こんなに雪深い土地に、本当に来てくれるのだろうか」と気を揉んでいたことを知る。
それまで縁もゆかりもなかった、北陸のJ3クラブ。太平洋側のJ1クラブを主戦場としていた左伴は、なぜ富山に向かったのか?「今でこそ、ちょっと考えることもありますが」と前置きした上で、「決定打はポテンシャルの高さでしたね」と打ち明ける。
「当時の数字を引っ張り出してみると、富山にJ1クラブがない理由がひとつも見当たらないんですよ。個人貯蓄もあるし、郷土愛も強いし、法人の財力もすごい。株主の北陸電力とインテックも本社は富山ですからね。その反面、自殺者の数は全国平均を上回っている。やっぱり、どんよりしている天気の影響なんですかね」