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「あんたら、ここで終わるつもりなの?」J2復帰カターレ富山のこれから…“69歳の熱血社長”左伴繁雄は言った「この人たちを残して離れるわけにはいかない」
posted2025/01/27 17:02
text by
宇都宮徹壱Tetsuichi Utsunomiya
photograph by
Tetsuichi Utsunomiya
「この人たちを残して富山を離れるわけには…」
カターレ富山の社長就任から3年目となる2023年。左伴はこの年を、富山での仕事の集大成と捉えていた。
ビジネス面での成長ぶりは、目を見張るものがあった。左伴が社長に就任する以前、コロナ禍前の2019年の数字と比較してみると、それは明らかだ。
収益は、5億2200万円から7億8600万円。スポンサー料収入は、3億4100万円から4億9000万円。グッズ収入は、2200万円から6600万円。入場料収入は、3000万円から5400万円。そして平均入場者数は、2837人から3444人まで上昇。
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あとは、ピッチ上での結果のみである。この年のJ3は、愛媛FCが首位を独走。富山は2位抜けを狙っていたが、第28節で鹿児島ユナイテッドFCに追い抜かれてしまう。昇格の可能性は、最終節まで残されていた。結果として、両クラブは勝ち点62で並びながらも、得失点差6で富山は涙を呑むこととなった。
「あの時は『マジかよ』って思いましたよ」と左伴。3年での昇格を果たせず、クラブから去ることも脳裏をよぎった。試合後、ひとりゴール裏に挨拶に向かう。ブーイングを覚悟していたが、サポーターの反応は意外なものであった。
「泣いている人たちもいたんですけど、皆さん、ポジティブな反応だったんです。『痺れるシーズンをありがとう!』とか『カターレの試合、面白かったよ!』とか。おそらく、こうした感動を味わう機会が少なかったんだろうなって思って。そんなことを考えたら、この人たちを残して富山を離れるわけにはいかないですよね」
「泥臭く、ウザいチーム」という“富山スタイル”
経営面では劇的な改革を進めてきた左伴だが、フットボールに関してはスタイルとコンセプトの堅持を現場に求めてきた。
ベースとなるのが、ボール奪取からの切り替え、球際、そして走力。その3原則の上に個人の技術があり、さらに戦術が搭載されるという考え方だ。