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箱根駅伝PRESSBACK NUMBER
「青学大に3分16秒差…誤算でした」箱根駅伝で勝負を分けた5区に、駒澤大・大八木弘明総監督の本音…それでも総合2位に「安堵感はあった」と語る理由
posted2025/01/30 11:00
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今年の箱根駅伝では総合2位となった駒澤大学の大八木弘明総監督のインタビュー(前編)
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加藤康博Yasuhiro Kato
photograph by
Keiji Ishikawa
「悔しい2位でしたね」
箱根駅伝が終わり約3週間。レースの振り返りも終え、すでに次なる目標へ向かい、準備を進め始めていた駒澤大学総監督、大八木弘明にそう問いかけると、快活に笑いながら、こんな言葉が返ってきた。
「たしかに悔しかったですけど、指導者としてみれば、”このチームでこれだけできたんだ”という安堵感はありました。手応えのある2位だったと思います」
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出雲駅伝、全日本大学駅伝ともに2位。最後の箱根で優勝を掴みたかったが届かなかった。なぜ2位で安堵を感じたのだろうか。昨年度から監督の座を教え子の藤田敦史に譲り、主たる采配を取る立場ではなくなったが、総監督という立場から今回の箱根駅伝を振り返ってもらうことにする。
◆◆◆
「今季は春に力のある学年が卒業し、育てながら戦う1年だと思っていました。藤田の指導のもと、夏から中堅どころや若い選手たちが育ってきて、どこまで戦えるかと思っていた中で出雲、全日本と2位になり、“箱根は面白くなる”と考えていたんです。結果的に箱根も2位でしたが、想定していた選手のほとんどが故障せずに走れ、つなぐべき選手がしっかりつないでくれました。特に復路は6区の伊藤蒼唯、7区の佐藤圭汰を皮切りに、8区から10区を走った2年生3名もすべて区間5位以内だったのがよかったですね。レース前からこの2年生たちがポイントと見ていましたが、期待通りの走りをしてくれたと思います。育ててきた選手が力を発揮し、復路優勝という結果を手にできたことに安堵を感じました」
「2区・篠原は十分にエースの走りをした」
レース全体の流れはどう見ていたのだろうか。1区で中央大の吉居駿恭がスタート直後に集団から抜け出し、独走体制を築いた。この点について「選手層の面から優勝争いは青山学院大、國學院大、そして駒澤大の3強の争いになると思っていました。他の2チームが前に行かなかったことを考えても、ここで中央大につかなかったのは正解だと思います」と、1区を担った帰山侑大の判断は正しかったと評価する。
そして2区は篠原倖太朗。大八木が指揮を取る世界を見据えた強化プロジェクト「Ggoat」で指導している選手だ。山川拓馬をこの2区に起用するという選択肢もあったが、セオリー通り、エースである篠原に託した。
「まず2大会前に5区を経験している山川が今回も5区に行くことが先に決まったんです。そうなると2区はエースである篠原しかいません。2区には中盤と最後に上りがあります。彼はあまり上りが得意ではないですが、走力の面では申し分ないですし、全日本7区で単独走でもしっかり走れる姿を見せていたので問題ないと考えていました。前回大会の鈴木芽吹と同じくらいでは走ると考えていましたが、実際、その芽吹のタイムを上回り、田澤廉(ともに現、トヨタ自動車)が2022年に出した記録に1秒に迫る走りでした。ここで青山学院大との差は広がりましたが、篠原は十分にエースの走りをしたと思います」