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核心にシュートを!BACK NUMBER
「まぁ結果論なので」じつは田中碧と町田浩樹が、中村敬斗を生かす「工夫」を…ただそれが日本代表の課題でもあるワケ〈オーストラリア戦深層〉
posted2024/10/21 17:01
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph by
Kiichi Matsumoto
オーストラリアのゴール期待値は「0.01」…なぜ苦戦?
第1回で触れた中村敬斗が――オウンゴールではあったが――目に見える結果をたぐりよせたのだとしたら、そこに至るまでの道筋を必死で作ろうとしたのが田中碧だった。
最終予選に入ってからも、そして日本代表が〈3-4-3〉システムを採用してからも初先発した彼が、オーストリア戦で光明を見出したことには、きっと意味がある。
1−1の引き分けに終わったオーストラリア戦がどんなゲームだったのかを簡単に振り返ろう。
この試合、様々な興味深いデータがある。
スペインメディアによればこれまでW杯予選は延べ8500試合以上行なわれてきたが、両チームが1本ずつオウンゴールを記録して1−1のドローに終わったのは、歴史上初めてだという。さらにオーストラリアについて見ていくと、こんなデータが出た。
シュート:前半7分の1本だけ
流れの中からのシュート:なし
流れの中からのクロス:後半の2本だけ
ゴール期待値(xG):0.01
「xG」とは、その試合で放ったシュートがどれだけの質だったのかを表す、ゴール期待値のこと。それがなんと0.01だった。失点したとはいえ、“100試合やって1回しか決められない”守備を日本は見せていた。失点シーン前の町田浩樹のパスを受けた鈴木彩艶のフィードにいたるまでの流れには議論の余地が大いにあるが——あれは言ってみれば攻撃の不用意な一手だ。
つまり、守備ではなく攻撃で問題を抱えていたのが、この試合の日本だった。
では、どこに問題があったか。
ピッチで起きた現象をもとに考察すると、オーストラリアの策にハマってしまったポイント、自分たちでハードルを上げて苦しんだポイントがそれぞれ2つあった。
〈日本がハマってしまったオーストラリアの策〉
1:日本のDFラインには自由にボールを持たれても良い
2:サイドの守備で中に行かせるのを避け、縦方向へ突破されるのは良い
〈日本が自らハードルを上げてしまったポイント〉
3:ポゼッションにこだわりすぎた
4:1対1に固執しすぎた
田中が見せた“ミドル以外の工夫”とは
そんな試合で田中が見せたアクションは、可能性を感じさせた。
たとえば、田中が71分に放ったミドルシュート。「ミドルシュートは引いた相手を崩すための常套手段」であることは間違いない。ただ、彼はもっと解像度の高い分析をしたうえで判断を下していた。
「相手ディフェンスラインの5枚のうち『3の脇(3センターバックと両サイドバック間のこと)』をどうやって取るのかが、すごく重要かなと思うので。裏のスペースを取るのも一つだし、『ミドル』を見せて相手を引き出すことも必要。相手がちゃんと守備をしてくる中で、どうやって、スライドの中に潜っていくのか……」
このミドル以上に評価される工夫が、別にある。