球体とリズムBACK NUMBER
「3年で収入1兆1362億円」FIFAやUEFAの拝金主義が日本代表“アウェー地上波放送ない問題”やバロンドール候補MFの大ケガと無関係ではないワケ
posted2024/10/20 11:03
text by
井川洋一Yoichi Igawa
photograph by
Getty Images/Kiichi Matsumoto
何かが暴発しないかぎり、エスタブリッシュメントのエゴや強欲が収まることはないのだろうか。いや、爆弾をいくら落としても解決しない人類の問題が今現在もあるように、エリートフットボールの世界でもすでにいくつかの破裂は起きてしまっている。
CLの試合数増加…選手側の意見は一切聞かれず
始まってふた月ほどが消化された2024-25シーズン、この競技のトップアスリートたちは11カ月の間に、クラブと代表の全公式戦で85試合に出場する可能性がある。4日弱に1試合のペースだ。最高級のフットボールをこの頻度で休みなく続けるのは、不可能に思える。
今季からまず、チャンピオンズリーグを筆頭とする欧州カップ戦のフォーマットが変更された。本大会の出場チームが32から36に増え、グループステージの代わりにリーグフェーズとプレーオフが導入され、全試合数は125試合から189試合に激増。ただしこの変更に際し、選手側の意見は一切聞かれなかったという。
「ファンにとっては最高だと思う。試合が増え、ビッグチーム同士の戦いも増えるのだから。でも試合が増えることに関して、選手がどう考えているのかは、誰も聞いてこなかった」
今季チャンピオンズリーグの開幕戦前日の記者会見で、リバプールのGKアリソンはそう打ち明けた。
「だからおそらく私たちの意見なんて、どうでもいいのだろう。でも試合の増加について、選手がどう考えているのかは、誰もが知っている。(中略)結局のところ、私たち選手は、ベストを尽くしたいだけなんだ。でも疲労を抱えながら、ハイレベルのプレーはできない」
翌日、今度はマンチェスター・シティのMFロドリが同じ席でより実際的な質問を受け──この流れを変えるためには選手側のストライキが必要かと──次のように応えた。
「僕ら選手たちは、もうすぐそこまで来ていると思う。当然だよね。誰に訊いても、答えは同じはずだ。つまり、これはロドリや特定の誰かの問題ではなく、選手たちの総意なんだ。そしてもしこの状況が続くなら、僕らには(ストライキ以外に)ほかの選択肢がない。この件で選手は気を揉んでいるよ。なぜなら、苦しむのは僕ら選手たちだから」
警鐘を鳴らした5日後、ロドリは“今季絶望”に
そんな風に具体的に警鐘を鳴らしたロドリは5日後、アーセナルとのプレミアリーグの一戦で前半に負傷交代。検査の結果、膝の前十字靭帯と半月板に手術が必要となり、今季をほぼ丸ごと棒に振ることになった。皮肉というより、悪夢のような展開だ。