炎の一筆入魂BACK NUMBER
首位カープを支える救援投手陣が心に刻む「減らす勇気」とは? ブルペンでの球数を減らして現れた大きな成果
text by
前原淳Jun Maehara
photograph byJIJI PRESS
posted2024/07/01 11:00
昨季は最優秀中継ぎ投手賞を受賞した島内颯太郎。今季もカープ投手陣のなかで最多登板を続ける
フォームを変えたことで、左のワンポイントという新境地を切り開いた。特に先発投手の代え時を迎える試合中盤は慌ただしくなる。それでも、首脳陣の期待に応えられるよう、フォーム改造を決めたときから覚悟していた。投球練習以外で全身の筋力の体温を上げたり、プライオボールを用いたりして工夫を重ねた。
今季の登板数28試合はすでに昨季の8試合を大きく上回る。“左殺し”という役割で生きて行く覚悟を決め、首脳陣にとっても貴重な存在となった。
塹江とともに勝ちパターンを支える役割を担う森浦大輔は、昨季ブルペンでの球数を15球から10球に減らしたことに加え、マウンドで与えられる5球の投球練習も4球にとどめている。
「バッターが立ったとき、いい球を投げられるかは別なので。バテないように投げようと思って」
マウンド度胸と同じように表情をひとつも変えずに淡々と語る。新人から2年続けて50試合登板した経験は伊達じゃない。
肩を作るのは1試合2回まで
選手個々だけでなく、チームとしての改革も当然ある。菊地原コーチは選手のサポートを約束する。
「選手が努力をするだけじゃなく、自分たちもベンチとブルペンでしっかりと連携をとって、できるだけ肩をつくる回数を減らさなければならないと思っている」
救援投手には肩を作らせるのは1試合で2度まで。延長戦に入らない限り1試合に3度肩をつくらせることはない。“無駄づくり”に制限をかけた。また、ここまで2連投はあっても、3連投はない。ベンチ入りさせても、試合前からノースローが決まっていたケースも何度かある。
ここまでの救援防御率はリーグトップの阪神の1.87に次ぐ1.96をマークする。新井体制下での改革の成果は、直近5年の救援防御率からも見てとれる。
◆直近5年の広島救援防御率
20年 4.64 リーグ6位
21年 3.50 リーグ4位
22年 3.31 リーグ5位
23年 3.14 リーグ3位
24年 1.96 リーグ2位
救援陣の安定は広島の躍進に大きく貢献している。4勝2敗で滑り出した交流戦明けの2カードでは、栗林が1試合、島内は2試合しか登板していない。チームが掲げた「減らす勇気」をそれぞれが持ち、2投手を除いたとしても救援陣の防御率は2.24とリーグ3位の同2.37の中日を上回る。小さな1歩だったかもしれない「減らす勇気」は、いま大きな成果を生んでいる。