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大谷翔平にも鈴木誠也にも「バッティングは負けたくない」…“ドラフト9位から這い上がった男”佐野恵太29歳が語る同世代スターへのホンネ

posted2024/06/30 11:02

 
大谷翔平にも鈴木誠也にも「バッティングは負けたくない」…“ドラフト9位から這い上がった男”佐野恵太29歳が語る同世代スターへのホンネ<Number Web> photograph by JIJI PRESS

6月27日の巨人戦で3号2ランを放ち、ガッツポーズする佐野恵太。今季も試行錯誤を重ねながら、徐々に本調子を取り戻しつつある

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酒井俊作

酒井俊作Shunsaku Sakai

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甲子園出場経験なし、ドラフト最下位指名。「大谷世代」と呼ばれる1994年度生まれの“遅れてきた男”佐野恵太を覚醒に導いたのは、かつての指揮官アレックス・ラミレスによる抜擢だった。今季、チーム内で激しい競争にさらされる佐野が、同世代の大谷翔平にも鈴木誠也にも「負けたくない」と語るバッティングへのこだわりとは。いまも試行錯誤を重ねる29歳の矜持に迫った。(全2回の2回目/前編へ)

なぜラミレスは佐野恵太をキャプテンに抜擢したのか

 横浜DeNAベイスターズ・佐野恵太のプロ野球人生には、大きな転機が2つあった。ひとつはセ・リーグ最下位のドラフト9位で指名されたこと。置かれた立場こそ厳しかったが、持ち前のバイタリティーで克服した。

 そして、もうひとつは上司との出会いである。入団した時の監督であるアレックス・ラミレスによって、佐野の能力は引き出された。常識にとらわれない思考の持ち主である指揮官が大胆な策を講じたのは、2019年の暮れである。佐野を食事に誘い、チームのキャプテンへの就任を打診したのだ。

 佐野は今もあの時、ラミレスから言われた言葉を鮮明に憶えている。

「キャプテンとしてやっていける能力の8割、9割をすでに兼ね備えていると思うから、もう何も変えずにやってくれ」

 ラミレスは佐野の打撃センスに惚れ込んでいた。スイングスピードの速さ。初球から仕掛ける積極性。バットコントロール。さらにナインを和ませる明るい性格。チームの先頭に立つ資質があるとみられていた。

 それでも、佐野が驚くのも無理はない。プロ3年目を終えたばかりの25歳はレギュラーではなかったからだ。だが、ラミレスが発した次の言葉に佐野は心が沸き立つ思いだった。

「4番でレフトの開幕も、もう決まっているからね」

 そのシーズン限りで、5年間、キャプテンとして率いてきた筒香嘉智がメジャーリーグ挑戦のために退団していた。大黒柱が背負ってきた「キャプテン」だけでなく「4番レフト」まで佐野に託そうというのだ。

「本当にビックリしました。ただ、期待に応えなきゃいけない思いもありましたし、よくバッティング練習が終わると、室内練習場に特打をしに連れて行ってもらっていました」

【次ページ】 「得点圏打率.059」を覆したサヨナラヒット

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