炎の一筆入魂BACK NUMBER
首位カープを支える救援投手陣が心に刻む「減らす勇気」とは? ブルペンでの球数を減らして現れた大きな成果
text by
前原淳Jun Maehara
photograph byJIJI PRESS
posted2024/07/01 11:00
昨季は最優秀中継ぎ投手賞を受賞した島内颯太郎。今季もカープ投手陣のなかで最多登板を続ける
今季ここまで、広島救援陣は13投手で計3121球の球数を記録している(データはすべて6月27日時点)。試合数では67試合。ブルペンで準備してきた球数もあれば、準備しても登板機会が巡って来なかった試合もある。試合終了後、登板しなかった救援投手がアイシングしている姿が物語るように、彼らに蓄積されるのは「3121球」による疲労だけではない。
昨季チーム最多62試合に登板した島内颯太郎は、今季もここまでチーム最多33試合に登板する。蓄積疲労も懸念されるが、意外なほど平然としている。
「シーズン序盤は雨天中止も多かったので、正直それほど投げている感覚はありません」
強がりのように感じないのは、ブルペンでの球数が減ったことが影響しているのかもしれない。最優秀中継ぎ投手となった昨季、ブルペンでの投球数を前年までの20球から15球に減らした。そして今季は、さらに減らして10球でマウンドへ行く。試合数だけの単純計算だけでも、昨季と比べて165球少なく、一昨年と比べると330球も減ったことになる。
球数を減らし真ん中のみ
徹底した準備で入団4年目に通算100セーブを達成した守護神の栗林良吏も、入団から昨季まで3年間の15球から11球以下に球数を変えた。昨季まではブルペンでも内角、外角とコースにきっちり投げ分けて準備してきたが、今は肩をつくることだけを意識してすべて真ん中へ投げ込む。
「しっかり投げる準備をしているので、4球減っても問題はない。肩がつくれれば11球以下でもいいと思っている。最初に結果が出たことで大丈夫だと思えたところもあります」
試行段階だったオープン戦で好結果が出たことで不安はなくなった。入団3年目の昨季、初めて抑え以外のポジションで投げた経験も生きている。実際に11球以下でマウンドに上がった試合もある。
島内はセットアッパーとして8回、栗林はストッパーとして9回を任されている。役割が明確なので重責を担うが、登板までの逆算はできる。一方で、ほかの救援陣は登板のタイミングが読めないため準備も大変だ。
投球フォームをサイドスローに変えた塹江敦哉は、昨季までの13球前後から大胆に球数を減らした。
「開幕したばかりのころは“3球”でした。真っすぐとスライダーだけで3球。最近はカットボールとフォークも使うので、6球くらいです。バックアップの回数が増えると思っていたので、キャンプから準備していました」