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「守備なら富田のほうが…とか」男子バレー“わずか12名”熾烈な五輪メンバー競争の舞台ウラ「正直に言うと、きつかった」大塚達宣の決意表明 

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田中夕子

田中夕子Yuko Tanaka

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photograph byTakahisa Hirano

posted2024/06/26 17:00

「守備なら富田のほうが…とか」男子バレー“わずか12名”熾烈な五輪メンバー競争の舞台ウラ「正直に言うと、きつかった」大塚達宣の決意表明<Number Web> photograph by Takahisa Hirano

パリ五輪メンバーの12名に選出された大塚達宣(23歳)

 同じアウトサイドヒッターというポジションでも、持ち味はそれぞれ異なる。

 たとえば、甲斐ならば高さとオフェンス力、サーブが武器であるのに対し、富田はディフェンス力に長けている。対して大塚は、といえば、攻守のバランスに長けた安定感が何よりの武器でもある。

 通常ならば互いのいいところばかりに目を向け、パズルのピースのように組み合わせてより強固なチームにすべくどうするかを考えればいい。だが、12名という限られたメンバー選考になれば、長所ばかりでなく、ウィークポイントにも目を向けなければならない。

 選考が続く中、ブラン監督の参謀である伊藤健士コーチも頭を悩ませていた。

「ブラジルラウンドを終えた段階では、攻撃面において甲斐が抜きん出ていました。でも対トップレベルになるとどうか。相手もサーブで狙ってくるし、そこで耐えられているかと言えば、耐えられなかったのが現実です。富田も同じでディフェンスは抜群だけれど、フロントでの攻撃力が足りない。大塚はポーランド戦の数字もよかったし、パワー、エナジーも出していて、まんべんなく良さを出していたけれど、でもディフェンスで見るとやっぱり富田のほうがいいのかな、とか。何を求めて評価するか、というのが非常に難しい。特に福岡ラウンドの4試合で、余計に難しくなりました」

「12名」に選ばれた大塚が示した覚悟

 熟考の末、甲斐に続いて選出されたのが大塚だった。ブラン監督は会見で「富田か大塚か、長い間決められずにいたが、最終的にはオフェンスに秀でた大塚を選んだ」と説明。大塚も日本バレーボール協会を通じて寄せられたコメントで「日本代表としての自覚と責任を持ってオリンピックを戦いたい」と述べた。

 そして、もう1つ、自身の果たすべき役割を加えていた。

「チームにいいエネルギーを与えられる選手でありたいと思います」

 フィリピンラウンドでのオランダ、フランス、アメリカの3連戦はケガで欠場した高橋藍の代わりに出場。プレーだけでなく、優勢時でも劣勢時でも常に周囲へ声をかけ続ける大塚の姿があった。

「相手に向かっていく姿勢を出すために、まず自分から上げていかないといけない。コートに立つチャンスが与えられた以上、いいエネルギーを与える存在でありたいし、僕が入ることで周りの選手にもいい顔でバレーをしてくれたらいいな、と思うので、どんな時にもファイトして立ち向かう。それが、僕にできることですべきことだと思っています」

 世界ランク2位。メダル獲得も周囲が期待して煽り立てるだけでなく、選手たちが「目標」として宣言する。そんな、誰もが胸躍らせる強い日本代表になるために、これまで共に戦って来た一人一人が欠かせぬ存在で、だからこそ、選ばれし12名は国の期待と、この場に立てなかったメンバーの悔しさも背負って、パリ五輪のコートに立つ。

 紛れもなく、俺たちは最強だ、と証明するために。

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