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プロ野球PRESSBACK NUMBER
プロ野球で異常事態「何かがおかしい」ホームランが消えている…なぜ? 村上宗隆も発言「“飛ばないボール”は本当か」専門家にズバリ聞いた
text by
曹宇鉉Uhyon Cho
photograph byJIJI PRESS
posted2024/06/15 11:00
ホームランが激減し、野球の危機ともいえる状況に…専門家に理由を聞いた(写真はイメージ)
具体的には、2019年から2023年にかけての5シーズンの球速帯別のストレートに対する「長打率」「コンタクト率」「引っ張り率」「フライ率」「HR/FB(フライ打球に占める本塁打の割合)」を比較。宮下氏の分析によれば、同じ球速帯のストレートに対して、シーズンを追うごとに長打率とHR/FBが下がっている一方で、コンタクト率、引っ張り率、フライ率は現状維持あるいは微増傾向にあった。
数字で判明「捉えた打球が伸びない」
投手のレベルが向上しているのは事実とはいえ、打者も手をこまねいているだけではなく、バットにボールを当てる技術を向上させ、ホームランを生み出しやすい「打球を引っ張る」「フライを打つ」といったポイントをおさえて対抗しているのが同データから読み取れる。にもかかわらず長打率やHR/FBが低下しているということは、つまるところ「捉えたはずの打球がホームランになっていない」ということだ。今季もこの傾向は続いており、4月18日に村上宗隆が口にした「打感や打球速度と飛距離が比例していない」といった言葉が、打者側の苦悩を如実に物語っている。
これらを踏まえたうえで、宮下氏は「“投高打低”が年々深刻化しているのは、投手のレベルアップ以外の環境要因が大きいのではないか」と仮説を立てる。
「先の記事で分析したのは2023年までのデータですが、今季はさらに極端な数字になっています。引っ張り、フライと、いい形でバットに当てるところまではできているのに、当たったあとのデータが著しく下落している。そこから『何かがおかしいのでは』というのは推測できます」
バッターの苦悩「何かがおかしい」
宮下氏の言うように「何かがおかしい」のであれば、当然ながら、最初に疑いの目を向けられるのはボールだろう。反発係数に問題がなくとも、「反発係数以外が変化している可能性もゼロではない」と宮下氏は指摘する。
今年のMLBも歴史的な打低シーズンとなっており、原因のひとつに空気抵抗の増加が挙げられる。その空気抵抗を数値化したものが「抗力係数」だ。
ボールの縫い目が高くなったり、表面が毛羽立ったりすれば、空気抵抗が大きくなり飛距離は落ちる。ボール表面のミリ単位のズレが、メートル単位の影響を与えることもある。