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「世間ではもう“終わった選手”だと…」サッカー日本代表・小川航基26歳が“消えた天才”にならなかった理由「でも腐ったことは一度もない」
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byJFA/AFLO
posted2024/06/10 11:03
オランダリーグでの活躍が認められ、日本代表に復帰した小川航基。先日のミャンマー戦ではスタメン起用に応える2ゴールをマークした
昨年、小川と同じU-20W杯に出場したMF市丸瑞希が、25歳で現役を引退した。今年3月のインタビューでは赤裸々に現役生活の葛藤を明かしている。
「練習後に家に帰りたくなかった。家にいるとイラつくし、悩むし、苦しくなってじっとしていられなかった。家に一人でいたくないという衝動だけで外出して、夜な夜な遊んでしまった」(市丸さん)
世代のトップを走ってきたゆえ、壁にぶち当たってきた時に初めて自分の弱さと直面する。市丸のように自暴自棄に陥り、お酒や遊びの誘惑に惑わされてしまった選手は過去にも多い。
小川自身もこの記事を目にしたという。旧友の告白を見て、少なからず自分もそうなる可能性があった、と感じたのではないだろうか。
こちらの狙いを察したのか、小川は即答する。
――納得がいくプレーができない。大怪我のあと、自暴自棄になることはなかったのか。
「正直、腐ってしまうような時期はまったくなかった。常に今の景色を思い描きながら練習も取り組んでいました。ただ、それだけじゃ成功しないことは多々ある世界です。監督やスタッフと合う・合わない、起用方法や戦術だったり、自分が点を獲れる環境に身を置けているかは重要。実力があってもそれを発揮できなくて、そのまま埋もれてしまう選手もいましたし、確かに、自分もそういう危険性があった選手の一人だったとは思います。でも、それを他責にするんじゃなくて、自分は『もっと成長しないといけない』という方向には持っていくことができたと思っています」
気持ちがいいほどのテンポの良い彼の言葉は、こちら側が勝手に立てた仮説をどんどん覆していく。
次稿では、「本当につらい時期だった」と振り返る2021年から、再び日本代表に返り咲くまでの葛藤を明かしている。チームメイトから浴びた衝撃的な言葉とは……。
〈第2回へ続く〉