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高校サッカーPRESSBACK NUMBER
「有望な中学生に断られ続けた」“時代遅れ”になった名門校…帝京高サッカー部“異色の指導者”が再建に挑んだ話「縁故採用をストップした」
posted2024/06/03 17:06
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph by
KYODO
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昭和から残っていた「しきたり」
根性論で衰退した古豪をどう再生するか――。
日比威(現・順天堂大学サッカー部監督、帝京高校サッカー部アドバイザー)は2014年に帝京のコーチに指名されると、まずは様子を見ることにした。
日比は1991年度の高校選手権優勝メンバーで、当時帝京のキャプテンだった。順天堂大学卒業後にアビスパ福岡と水戸ホーリーホックでプレーし、16年間勤めた選手マネジメント会社ではたくさんの日本代表選手を担当した。そういう過去の経験から、いきなり改革すると反発を招くと予想したのだ。
目の当たりにしたのは、昭和から変わらない「しきたり」だった。
「コーチとして帝京へ戻ったら昔の残像というか、変な上下関係のしきたりみたいなものが残っていたんですよ。『うわー、俺らの時代もこんなのがあったな』と。
たとえば『先輩より先に帰ってはいけない』や『部室の掃除は1年生がする』など。敬語も過度に求められていた。ものすごく窮屈だと思いました」
「1年生は召使いではない」
日比は2015年に監督に昇格してからもしばらくは様子を伺っていたが、2年目あたりからまずは上下関係にメスを入れた。「上級生が率先して行動する」組織に変えたのだ。
「ちょうど帝京大学ラグビー部の岩出雅之監督(現・帝京大学スポーツ局局長)がテレビに出ていて、2、3年生がチーム運営をしているという特集を見たんです。1年生はまだ右も左もわからないので、2、3年が行動で示すというマネジメントです。ちなみに4年生が入っていないのは、就職活動で忙しいからです。
高校も同じだと思い、帝京でも新たに2年生が道具の片付けや部室の掃除をやる体制にしました。1年生は上級生の召使いではないですからね」
「毎日おにぎりを300個握った」
ふんぞり返っていたら人がついてこないのは指導者も同じだ。日比は大きな釜を3つ購入し、毎日のように選手たちのためにおにぎりを握った。