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高校サッカーPRESSBACK NUMBER
「有望な中学生に断られ続けた」“時代遅れ”になった名門校…帝京高サッカー部“異色の指導者”が再建に挑んだ話「縁故採用をストップした」
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph byKYODO
posted2024/06/03 17:06
1992年の高校選手権決勝。両校優勝後の帝京高、四日市中央工高のイレブン。帝京高キャプテンは日比威だった
最近の若者と接するうえで、過度に期待しすぎないこともポイントである。
「求めすぎるのはあまり良くないと思うんですよ。うまくいかないと、指導者自身も追い込まれてしまう。『こうなってくれたらいいな』くらいに思っておき、それを超えたら『うわっ、やるじゃん』とポジティブに驚く。その方が自主的に考えて行動する環境が生まれると思います」
「走り」の朝練を始めた理由
今、日比は順天堂大学サッカー部でも自主性を育む指導をしている。学生たちにピッチ内外の運営や企画を任せているのだ。
「僕がいた時代とは雲泥の差で、今の大学生はものすごく優秀。学生スタッフが40人いるんですが、実戦の場を増やすために『CHIBA MIRAI LEAGUE』という新規のリーグを立ち上げたり、大学リーグの試合でエスコートキッズを募集したり、自分たちの力で何でもつくってしまう。チーム強化については学生アナリストや学生アスレチックトレーナーが貢献してくれています。
特に驚かされたのが主務担当の学生。営業、マーケティング、マネージャー、用具係のすべてをこなしており、今すぐJリーグで社員になれる。選手マネジメント会社にいた僕でも驚くレベルでした」
興味深いことに、順天堂大学では週に1度、「走り」の朝練を始めたという。日比は高校時代の練習経験をいかし、「走る練習は必要最低限でやっています。学生たちが自ら必要だと思ってやれるように」と話す。
「ボールを握るサッカーをやるうえで、最も大事なのはいかにボールを奪い返すか。それにはやはり運動量が必要なんですよ。なので毎週火曜日の朝6時半から走りのトレーニングをしています。その効果が出始めて、終盤まで体力が持つようになってきた。まあ、それでもフルマラソンはやりませんけどね(笑)」
日比が自分の指導を説明するときに好んで使うフレーズがある。
「選手は自由とデタラメを履き違えてはいけない」
規律でがんじがらめにしてはダメだし、自由すぎて規律が緩みすぎてもいけない。
令和の指導者にはそのバランスを見抜く能力が求められる。
<前編《昭和のスゴい練習》編から続く>