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「形になってきた」交流戦連勝スタート、小園・末包・坂倉の好調で、やりくり上手のカープ新井監督がようやく口にした成長の手応え 

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前原淳

前原淳Jun Maehara

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photograph byJIJI PRESS

posted2024/06/03 11:00

「形になってきた」交流戦連勝スタート、小園・末包・坂倉の好調で、やりくり上手のカープ新井監督がようやく口にした成長の手応え<Number Web> photograph by JIJI PRESS

5月に入ってからは「4番サード」での起用が増えた小園。リーグ5位の打率.296(6月2日時点・規定打席到達者)でカープ打線を牽引する

 末包は昇格からまだ時間が短く、今後不調に陥る時期が来るだろう。坂倉も昨季以上に捕手以外での出場が増え、捕手としての存在価値も示していかなければいけない。

 また、打撃では一皮むけた小園は、まだもろさが散見される。連勝が止まった30日オリックス戦では、2点リードの7回に先頭打者の頓宮裕真が打った高く弾んだゴロに後ろへ下がったことで、三ゴロが内野安打にすり替わってしまった。さらに1点差とされ、1死満塁から太田椋にライト前タイムリーヒットを打たれると、中継に入った一塁坂倉の三塁転送を見逃すボーンヘッド。球場全体に、2点以上の重たい空気が充満したように感じられた。

 慣れない三塁守備。新井監督は前者のミスはかばっても、後者のミスには珍しく語気を強めた。

「エラーは使っている監督の責任なので、そこは全然気にしなくていい。練習して慣れていってもらいたい。ただ、やらないといけないことは、それとはまた別。インプレー中にボールから目を切っちゃいけないことは、本人も反省していると思うので、もう二度とないと思います」

 小園が持つ能力の高さを認めているからこそ、周囲はまだ物足りなく感じているのかもしれない。この日は初回に記録した失策を引きずったような動きが試合を通して見られた。遊撃から三塁にコンバートされたのも、そういった隙が招いたものだった。開幕から好調を維持していた打撃の成績が落ちると、守備の動きに影響。消極的な動きに、数字に表れないミスもあった。信頼だけでなく、遊撃のポジションを奪い返すためにも、下を向いている時間はない。

現代に生きる毛利元就の教え

 25年ぶりに優勝した8年前の交流戦では、21歳の鈴木が一気にブレークし、その後チームを支える存在となった。だがその鈴木もミスを繰り返すことから、当時の緒方孝市監督から「一日一善くん」と呼ばれる時期もあった。

 3選手も近い将来チームを支える存在と目されているからこそ、グラウンド内外での立ち居振る舞い、野球に取り組む姿勢が求められるのだ。広島ゆかりの戦国武将・毛利元就が3人の子に「三子教訓状」を書いたように、今季の広島打線も小園、末包、坂倉が3人で束となって支えていく──。広島の将、新井監督はそう期待しているに違いない。

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