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工藤公康がいま明かす“ソフトバンク最強時代”のウラ側「一瞬、選手に嫌われても構わない」「部屋にモニター6台」千賀滉大も耐えた“猛練習”の意図
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph byYuki Suenaga
posted2024/06/01 11:04
ソフトバンク元監督・工藤公康がNumberWebのロングインタビューに応じた
「帰ってきて最初に見るのはホークスの二軍の試合。それから、その日の一軍の全試合。編集してもらっていたけど、それでも1時間40分くらいにはなります。次に対戦する相手ピッチャーも見てましたね」
調子の良さ、そのチームの得点パターン、バッテリーの配球や攻め方、ランナーがいるときやいないときの作戦や戦略など、見るべきものは多岐にわたる。
ピッチャーの代え時…なぜ迷わない?
その中でも、球団のデータ分析班とは別に、独自で毎試合、全投手の全投球についてトラックマンデータを駆使しながら、個人契約する助手の手も借りて分析を行った。特に投手のリリースポイントの高さや位置に注意を払った。どの投手でも、試合ごとはもちろん1試合の中でも少なからず変化が生じる。その変化を、球速や回転数、回転軸、結果などと照合しながら分析して好不調の原因を割り出した。加えて投手が故障した場合、直前のデータを分析することで、その後の故障防止につなげる目的もあった。
だから、であろう。工藤はきっぱり言った。
「『野球の中で一番難しいのは何ですか?』と質問された時に、『ピッチャーの代え時』って声が上がりますよね。私は、試合後にデータとの擦り合わせを積み重ねて、ベンチから選手をみる目を養っていきました。根拠があったので迷わずに決断できたのだと思います」
その“根拠”を得るために、グラウンド外でも膨大な時間を捧げた。一体、どのタイミングで休息や睡眠をとっているのか――。
そんな心配をよそに、球場にも出来るだけ早く顔を出していた。
「選手たちの様子を見ておきたかったので」
しかし、監督就任2年目だった2016年のある日のこと。工藤の言葉によって、選手たちとのボタンの掛け違いを生んでしまう事態が起きたのだった。
〈続く〉