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酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
6年141億円契約も納得…ダルビッシュ有37歳「日米200勝の99球」全8球種ストライク率がスゴい〈大谷翔平80勝、前田健太で163勝〉
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph bySean M.Haffey/Getty Images
posted2024/05/24 11:03
2024年、パドレスで好投を続けるダルビッシュ有。199勝を挙げたドジャース戦での渾身のガッツポーズ
このキャンプに参加した弾道計測器「トラックマン」の野球部門の責任者、星川太輔氏が「トラックマン持ってきているんですが、データ取りますか?」と聞くと「マジすか、超助かります。お願いします」とダルビッシュが言ったことは、このコラムで以前記した。ダルビッシュは「トラックマン」のデータを1球ごとにチェックし、自身の感覚とデータのすり合わせをした。
この姿勢が、NPBの若手投手たちのデータ活用へ向けた意識改革を促したのだ。
“日米200勝の99球”を分析すると異能さが浮き彫りに
2023年は8勝に終わり、防御率も4.56と良くなかったが、2024年は開幕から好調を維持している。
日米通算200勝を達成した5月19日のブレーブス戦では7回99球を投げ、無失点、被安打2、9奪三振1与四球、文句のつけようのない成績だった。この日の登板で投じた99球の球種を分析すると、ダルビッシュ有という投手の「異能ぶり」が浮き彫りになる。km/hは平均球速、S率はストライク率。
スライダー32球 136.3km/h
S率71.9% 空振2 安打1
フォーシーム20球 150.6km/h
S率55.0% 空振2 安打0
シンカー 13球 149.7km/h
S率76.9% 空振0 安打1
ナックルカーブ 12球 126.5km
S率83.3% 空振4安打0
スイーパー 8球 130.5km/h
S率87.5% 空振2 安打0
カーブ 6球 118.1km/h
S率83.3% 空振4 安打0
スプリッター 5球 139.4km/h
S率60.0% 空振0 安打0
カッター 3球 143.2km/h
S率66.7% 空振0 安打0
投げた球種はなんと8種類、フォーシームとスプリッター、カーブ、カットボールで組み立てる山本由伸、フォーシームとスプリッターで押す今永昇太などに比べて球種の多彩さは驚くばかりだ。フォーシームの平均は150km/h超と、カブスで抜群の成績を残している今永よりも速い。
全ての球でストライクが取れる。
なかでもメジャーリーグの名リリーフ、クレイグ・キンブレルから習ったというナックルカーブは空振り率も高く、各打者の脅威になっている。さらには昨年のWBCキャンプでロッテの佐々木朗希に伝授したスイーパーも高いストライク率を誇っている。
雄星107勝、大谷80勝、由伸75勝を踏まえれば…
見事な投球は、起伏の多い野球人生20年で磨き上げたものだろう。若い投手が一朝一夕で真似ることはできないだろうが、大きな目標になるはずだ。それは日米通算の勝利数を見ても、よくわかる。