プロ野球亭日乗BACK NUMBER
渡邉恒雄「たかが選手」発言にライブドア堀江貴文参入、ハンバーグ食べながら楽天・三木谷浩史「よし、やろう」…いま明かされる球界再編の舞台裏
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byJIJI PRESS
posted2024/05/18 17:00
近鉄、オリックスの合併問題など球界再編問題を協議したプロ野球オーナー会議後に会見する(左から)田代和近鉄オーナー、渡邉恒雄巨人オーナー、根来泰周コミッショナー、宮内義彦オリックスオーナー
後に巨人関係者から聞いた話では、当時すでに読売新聞の社会部がライブドアの様々な不法実態を把握し、同社の球界参入は非常に危険だという指摘があった。2年後には粉飾決算など証券取引法違反で堀江社長は逮捕されるが、このときはまだ司直の手が入る前のことだ。水面下でその危険性を知った渡邉オーナーが、「新規参入にはオーナー会議の承認が必要」という規定を盾に、「オレが知らない人は入るわけにはいかない」という“不規則発言”で牽制したということだった。
楽天が参入を決断した直後の9月17日には、選手会とNPBの交渉は些細な感情のもつれ、言葉のいき違いで決裂。選手会は翌18日から2日間にわたってプロ野球史上初のストライキを決行して、球界は混乱の極みを見ることになる。
事態収集のためには、山口オーナーが語るようにどこかが新規参入して、パ・リーグを6球団に戻すしか道はなかったはずだ。だからこそライブドアではない、新規参入球団を探さなければならなかったのである。
ソフトバンクが実質的には外資の「コロニー」が保有していたダイエー球団を買収して、この年の12月24日には「福岡ソフトバンクホークス」が誕生。大混乱の末に球界は現在に至る2リーグ12球団体制が確立されることになる。
球界再編20年目の真実
あれから今年で20年が経過しようとしている。
「プロ野球にとって2004年という年は空前絶後の危機の年だったが、危機はさまざまな動きが複雑に絡み合いながら進行したため、発言の真意やものごとの因果関係がとてもわかりにくい。世論と報道が過熱したあの年、球界の深層で何が起きていたのか。本書で曲がりなりにも謎解きができているとしたら、5年余の間に多くの方々から貴重な話をうかがえたことによる」
山室氏はこう謝辞を述べて本書を締め括っている。
丹念な取材と資料の掘り起こし、そして検証作業を尽くした本書は、まさに「20年目の真実」を伝える「決定版」と言えるだろう。