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渡邉恒雄「たかが選手」発言にライブドア堀江貴文参入、ハンバーグ食べながら楽天・三木谷浩史「よし、やろう」…いま明かされる球界再編の舞台裏
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byJIJI PRESS
posted2024/05/18 17:00
近鉄、オリックスの合併問題など球界再編問題を協議したプロ野球オーナー会議後に会見する(左から)田代和近鉄オーナー、渡邉恒雄巨人オーナー、根来泰周コミッショナー、宮内義彦オリックスオーナー
9月18日に選手会が「合併の凍結」「新規参入への門戸開放」を求めて史上初のストライキに突入し、事態はクライマックスを迎える。しかし実はその裏で水面下では楽天が新規参入を決断。セ、パ6球団による2リーグ制維持へと事態は静かに進んでいたのである。
本書ではそうした騒動の経過を数々の関係者の証言や資料の検証で背景までも掘り起こしていく。
中でも焦眉は楽天参入の裏舞台だった。
近鉄とオリックスの合併問題が表面化した直後から近鉄買収に名乗りを挙げたライブドアは、選手会からも「ホワイトナイト」としての期待を集め、一つの世論を形成するほどに広がりを見せていた。
しかし、その一方で……。
「状況を変えるにはどこかが参入表明して、パが6に復帰するほか策はないと思った」
「ライブドアは参入を表明していた。実行委(12球団実行委員会)は合併を承認する。パは5球団になる。ライブドアと選手会顧問弁護士が親密なことは分かっている。球界のアレルギーを考えればライブドアが入ってもうまくいかない」
ハンバーグを食べながら、三木谷氏「よし、わかった」
本書で当時の状況をこう振り返ったのは読売新聞グループ本社代表取締役社長の巨人・山口寿一オーナーだった。当時は読売新聞グループ本社社長室次長兼法務部長としてグループ全体の事業計画や全体の危機管理などを担当していた。
ストを目前にした9月6日、山口オーナーは旧知のビジネスコンサルタントの井上智治氏に「球団の赤字体質に耐えられるしっかりしたオーナー企業はないでしょうか」と相談。そこで出てきた企業が「楽天」だったという。山口オーナーの記憶では9月10日に楽天本社を訪れ、三木谷浩史社長と井上氏らでランチミーティングを行った。そこで山口オーナーはハンバーグを食べながら球団の収支構造などを説明すると「まだハンバーグを食べ終わらないくらいのタイミングで三木谷さんが『よし、わかった。やろう』と言った」。
山口オーナーが井上氏に新規参入球団を相談してからわずか4日。電撃的な参入の裏側が克明に明らかにされている。
プロ野球史上初のストライキ決行へ
当時、筆者も再編問題を取材していたが、取材の感触としては、とにかくライブドア参入には読売新聞関係者を中心に、拒絶反応が強かった。堀江社長が参入を表明した直後に当時の渡邉オーナーが「オレが知らない人は入るわけにはいかない。プロ野球というのは伝統がそれぞれある。金さえあればいいというもんじゃない」と発言。これも多くの批判を浴びることになった。