プロ野球亭日乗BACK NUMBER

渡邉恒雄「たかが選手」発言にライブドア堀江貴文参入、ハンバーグ食べながら楽天・三木谷浩史「よし、やろう」…いま明かされる球界再編の舞台裏

posted2024/05/18 17:00

 
渡邉恒雄「たかが選手」発言にライブドア堀江貴文参入、ハンバーグ食べながら楽天・三木谷浩史「よし、やろう」…いま明かされる球界再編の舞台裏<Number Web> photograph by JIJI PRESS

近鉄、オリックスの合併問題など球界再編問題を協議したプロ野球オーナー会議後に会見する(左から)田代和近鉄オーナー、渡邉恒雄巨人オーナー、根来泰周コミッショナー、宮内義彦オリックスオーナー

text by

鷲田康

鷲田康Yasushi Washida

PROFILE

photograph by

JIJI PRESS

 世に蔓延る“こたつ記事”は、スポーツ紙のネット配信ではもはや稼ぎ頭となっている。

 各紙はこたつ専門部署を設けて、毎日、テレビやブログ、ネット記事をパトロール、それを拡大再生産する専門記者も置く。そして記事を書くためのベースであるはずの取材、事実検証という作業は一切なく、「誰かがテレビでこう言っていた」「誰かのブログでこう書いてあった」という話を拡大再生産していくのである。お金(経営)のためなら面白くて、アクセス数さえ稼げればいい。発言やブログの記事内容が間違っていようが、それは発信者の責任。それを検証もせずに再生産した側は知らぬ存ぜぬ、ほっかむりを決め込むのである。

 ノンフィクションの世界も同じである。最もベーシックであるはずの取材と検証という作業がないまま、とにかく過去物を掘り起こして、つなぎ合わせただけの“こたつノンフィクション”が平気で出回っている。

「キミはその話の裏はきちんととっているのか?」

 スポーツ紙の記者時代に取材に行くと、必ずこう迫ってきた取材対象がいた。

 読売新聞の元社会部記者で、同社広報部長、巨人の代表などを歴任した山室寛之氏である。山室氏とは広報部長から巨人の代表時代が筆者の取材対象で、取材が甘いとそうして追い返された。同社を退職後は野球史家、ノンフィクション作家として活躍。あのとき筆者に迫った言葉通りの丹念な取材と資料の掘り起こし、そして検証作業には、同業者として一目も二目も置く存在である。

 その山室氏がライフワークとして取り組む野球史シリーズ。『1988年のパ・リーグ』に続く第5弾は球界再編騒動が起こった2004年が舞台だ。タイトルはズバリ『2004年のプロ野球 球界再編20年目の真実』(新潮社刊)である。

球界再編の流れを変えた渡邉恒雄オーナーの発言

 2004年という年は長嶋茂雄監督の下、アテネ五輪で初めてオールプロによる日本代表チームが結成され、その後の侍ジャパンの礎が築かれた年だ。そしてグラウンド外では、ダイエーの身売り騒動、近鉄とオリックスの合併を機に球界再編問題が勃発。その後のプロ野球界にとって、まさにメルクマールとなる年だったと言える。

 近鉄とオリックスの合併問題に端を発し、当時の西武・堤義明オーナーによる「もう一つの合併」発言で、にわかに球界は10球団1リーグ制への移行が現実味を帯びていった。その流れに反旗を翻したのが古田敦也会長(ヤクルト)を中心とした選手会労組だった。

 ただ、経営サイドも決して一枚岩ではなく、1試合1億円と言われた巨人戦の放映権料を巡る各球団の思惑もあり虚々実々の駆け引きが展開される。

 一気に再編を進めようとする経営サイド。しかしその流れを変えたのが当時の巨人・渡邉恒雄オーナーによる「たかが選手」発言だった。

ライブドア・堀江貴文社長の参入

 この「たかが発言」が大きく報じられたことで、世論は一気に選手会擁護へと傾いていく。そしてそんな中でライブドア・堀江貴文社長が近鉄買収に名乗りを上げて……。

【次ページ】 ライブドア・堀江貴文社長の参入

1 2 3 NEXT
堀江貴文
ライブドア
三木谷浩史
東北楽天ゴールデンイーグルス
古田敦也
堤義明
山口寿一
山室寛之
近鉄バファローズ
オリックス・ブルーウェーブ
渡邉恒雄
読売ジャイアンツ

プロ野球の前後の記事

ページトップ